劇場公開日 1961年7月12日

「アイヌと黄門様」水戸黄門海を渡る バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 アイヌと黄門様

2026年3月3日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

原作・脚本は『月光仮面』で有名な川内康範で、長谷川一夫が黄門様とアイヌの酋長シャグシャインを2役で演じ、助さんが市川雷蔵、格さんが勝新太郎という豪華版。なにしろ水戸黄門なんであくまで基本は娯楽映画で、内容も史実をヒントにはしているものの基本的には関係ないと考えたほうがいい。シャグシャインも反乱を起こしたアイヌの酋長(首長)というところが史実における江戸時代のシャクシャインと同じというくらいで、シャクシャインをモデルとした架空人物と考えたほうがいいだろう。松前藩のお殿様も調べてみたら史実とは別人(架空の人物)だ。まあ水戸黄門と助さん・格さんだって史実の徳川光圀と家臣たちをモデルとした架空人物みたいなもんですからね。悪者はお決まり通りの悪家老と悪徳商人に、裏切り者のアイヌ酋長。アイヌの風俗などの描写は僕は専門家ではないのでくわしくはわからないが、素人目にはそれほどおかしなところは見受けられなかったように思う。当時は「蝦夷(えぞ)」と呼ばれていたはずのアイヌがなぜか一貫して「アイヌ」と呼ばれている(蝦夷地のことを「蝦夷」と言っているためかもしれないが)、黄門様や松前藩の殿様が「アイヌも同じ日本人なのだから平等に扱わなければならない」とやたらと言う、史実より100年ほど早い蝦夷地測量とロシアの南下が描かれ、異国に測量図が渡る脅威が強調されるといったところは、むしろ製作当時の時代状況の反映と言ったほうがいいだろう。最後も史実とは違い、もちろん大団円だ。

映画的には西部劇を意識したようなスペクタクル・シーンがあったりして、純粋に娯楽映画としてなかなか面白かった。長谷川が黄門様とシャグシャインの2役をやってると聞いて、水戸黄門によくある黄門様と瓜二つの人物が出会ってお互いビックリというパターンかと思いきや、年齢も違えばメイクも違ってそっくりさんパターンではないので、長谷川がわざわざ2役をやる必要性が全然ない。黄門様だけだと長谷川の見せ場が少なかったからだろうか? また助さんが序盤で行方不明になってしまい、入れ替わるように出てくる謎の虚無僧が助さんなのはバレバレなんだが、虚無僧笠を一切取らない上に声も明らかに雷蔵とは違う。終盤、声が雷蔵に戻ったと思ったら笠を取って雷蔵登場。スケジュールの都合か何かで完全に中抜けしている(笑)。当時の娯楽映画の典型的ご都合主義という感じだが、そんなところも含めてなかなか楽しい映画だった。

バラージ