ボクサー(1977)

劇場公開日:

解説

ボクシングへの執念を断ち切れぬ中年の元ボクサーと、彼に捨われたボクサー志望の若者の二人を軸に裏町の仲間たちの人情と哀歓を織りまぜて、ボクシングに全てを賭ける男の姿を描く。またWBA世界Jフライ級チャンピオン具志堅用高、他歴代世界チャンピオンらが特別出演する。脚本は岸田理生と「泥だらけの純情(1977)」の石森史郎と「田園に死す」の寺山修司、監督も同作の寺山修司、撮影も同作の鈴木達夫がそれぞれ担当。

1977年製作/94分/日本
配給:東映
劇場公開日:1977年10月1日

ストーリー

熱気と興奮が渦巻くボクシングスタジアムに、今日も隼の姿があった。よれよれのレインコートに身を包んだ隼こそ、元東洋チャンピオンである。過ぎ去った栄光の夢を追っているのだろうか。しかし、今はもう彼に気づく者は誰もいない。隼が天馬と出逢ったのは弟の死が原因であった。隼のたった一人の弟淑はビル解体の工事現場で事故死した。機械の故障による不慮の事故だった。そのクレーンを運転していたのが天馬である。不幸にも同じ工事現場で働く仲間の事故、しかも同じ職場の女性みずえと淑は結婚を間近かにひかえていた。そして天馬もみずえに恋心をいだいていたことから「わざとやったんだ」という心ない噂が、失意の隼の耳に伝わってきた。「涙橋食堂」には毎日いろんな人が集まってきた。天馬も常連の一人である。食堂に来た隼は、天馬がボクシングジムに通っていることを知る。天馬はチャンピオンを夢みて沖縄から上京していた。初試合の日が迫っている。毎日のハードな練習も効果なく、天馬はマットに沈んでしまった。彼の不自由な片足に限界をみたジムは天馬を見捨てる。ジムを追われた天馬は隼を訪ね、チャンピオンになりたい一心で隼に頼みこむが、隼は何度も断った。しかし、天馬の熱意に胸を開いたとき、隼の顔には笑顔がもどっていた。隼と天馬のトレーニングが始まった。男と男の闘いは続く。そして天馬に、遂にチャンスがやってくる。東日本新人王決定戦をひかえて、トレーニングにも熱がはいる。天馬は予戦を勝ち抜いた。しかし、天馬の試合がすすむにつれ、命さえおとしかねない彼の足の動きを見て、隼はもうやめさせようと心に決めた。しかし、天馬には不自由な足の事など眼中になかった。そして、世界タイトルマッチの前座試合として行われる新人王決定戦のリングに天馬は立った。騒然とした歓声、ラウンドは回を重ね、勝者は決った。レフェリーが高々と勝者の手をあげる。隼は涙を流しながらリングにあがり、天馬を抱きかかえるのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0時代を象徴するボクシング映画

2018年10月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

リングに向かう狭い通路を静かに行き交うボクサー、閉塞感を見事に表現しきった冒頭が非常に印象的。
昔の都電荒川線とか木場橋の下に浮かんでいる材木とか、昔の東京の街並みを興味深く見つめる。
ドーベルマンだと思う犬が可愛いし非常に効果的。
清水健太郎がカッコいい、具志堅用高がカッコいい
食堂のシーンは寺山修司らしくごっちゃごちゃ。面白くて、そこがなくては成立しない作品だが、個人的には苦手。
時代を象徴するようなボクシング映画。良くも悪くも1970年代という時代が素直に映し出されていた。

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SH
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