忍者秘帖 梟の城

劇場公開日:1963年3月24日

解説

司馬遼太郎原作を「雨の中に消えて」の池田一朗が脚色、「変幻紫頭巾」の工藤栄一が監督した忍者もの。撮影は「大暴れ五十三次」の鷲尾元也。

1963年製作/91分/日本
配給:東映
劇場公開日:1963年3月24日

あらすじ

天正十九年光秀の乱で信長の天下は崩壊、秀吉がわが世の春を謳歌するに至った。十年前信長が伊賀を攻略した際、伊賀忍者のほとんどが討死した。伊賀忍者葛篭重蔵は肉親の悉くを殺され信長暗殺に命を賭けていたが、光秀の乱によりその必要も失い山奥に下忍の黒阿弥と共に仏いじりと読経の日を送っていた。こんな重蔵を訪ねた師匠下柘植次郎左衛門は、秀吉を斬ることは伊賀を復興させることであると口説いた。一方次郎左衛門の娘、木さるの許婚者、風間五平は忍者生活に見切りをつけ京の所司代前田玄以の傘下となり石川五衛門と名のったが、前身を甲賀忍者摩利洞玄に見破られて、秀吉を狙う者の撲滅と重蔵を斬ることを命ぜられた。同じ命を受けた忍者の小萩は重蔵にひかれ許されぬ恋に燃えた。十年ぶりに五平と再会した重蔵は、朋輩が敵となっていることを知った。師次郎左衛門はこんな二人を味方にし、豊臣、徳川の二股をかけ有利な方につく魂胆であった。この事を知った重蔵は再度山に戻り、次郎左衛門は単身で摩利洞玄を倒すことを決意したが逆に殺されてしまった。又黒阿弥も洞玄と五平によって非業の死を遂げた。この惨事を知らせに来た小萩は、重蔵が一族の復讐と秀吉暗殺の血気にはやるのを止めて忍者同士のはかない恋も束の間、宿命を負って別れねばならなかった。数日後所司代に忍び入った重蔵は秘術の総てを五体に託し洞玄を倒した。五平の毒を塗った手裏剣に傷ついたが、自分の立場を捨てた小萩の看護で一命を救われた。全快した重蔵は、木さると自分を師と仰ぐ雲太郎を甲賀衆から山へ逃し、秀吉を殺すべく伏見城へ向うが、偉大な秀吉を前にして憎しみもうすらぎ、再び戦乱の世を招く愚かさを悟った。人里離れた山道を重蔵と小萩が一頭の馬に相乗りし、真の人間の幸せを求めて、木さると雲太郎の待つ梟の城へ向うのだった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

映画レビュー

3.5 大友柳太朗の忍者は軽やかではないが、見栄を切って敵を斬るのだ

2026年6月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

東映チャンネル(スカパー!)の忍者映画特集にて。

司馬遼太郎の直木賞受賞作「梟の城」を、二人の伊賀忍者の価値観の相違が招く皮肉な運命に的を絞った脚色で、1時間半に凝縮している。
脚本は池田一朗(‘’吉原御免状‘’、‘’一夢庵風流記‘’などの小説家・隆慶一郎の本名)。

タイトルの”梟”は闇夜に活動する忍者をたとえたもので、作中の忍者対決場面はほぼ夜だ。
闇の中だから光を活かせる。これこそ工藤栄一監督の格好のキャンバス。雨を降らせたりして、工藤美学が見事に展開する。
ただ、あまりに暗すぎて見づらい場面もあるから、ぜひとも4Kデジタル修復を施してほしい。
手裏剣飛び交う闘いの場面もさることながら、葛籠重蔵(つづらじゅうぞう)(大友柳太朗)が伏見城に潜入する短いシーンが秀逸で、壁や石垣と黒衣の忍者を画面に収める芸術的な構図に惚れ惚れする。

織田信長の伊賀攻め(天正伊賀の乱)で生き残った伊賀国衆は散り散りとなる。
10年が経ち、時代は太閤秀吉の天下となっていた。
原作では、織田信長が明智光秀に討たれたことで葛籠重蔵は両親と妹の仇討ちという目標を失っていたが、この映画では伊賀攻めを指揮していたのが羽柴秀吉で、秀吉の命を狙い続けていた。
秀吉ではなく信長が自ら伊賀攻めの陣頭指揮をとったとされる史実を司馬遼太郎は無視していないが、映画では秀吉暗殺に動く重蔵の動機付けを単純化するためにアレンジされている。

伊賀の同胞だった風間五平(大木実)は京都所司代に仕官し、抜け忍となる。忍者には立身出世の道がないが、武士になれば手柄次第で出世ができると言うのだ。(原作ではこれを石川五右衛門につなげたサイドストーリーがあり、面白い)
一方、重蔵は忍者の方が自由だと言う。はて、厳しい掟に縛られ、権力者の影の仕事に従事するしかなかった忍者が自由なのかと思うのだが、時の情勢を見て仕える相手を変えてきた伊賀の変わり身の早さを自由と捉えるのか、それはさておき…。
この二人が対立することで、伊賀を代表する二人の強者忍者の対決がアクションの中心となるのだが、京都所司代が抱える甲賀者も襲ってくるから重蔵は気が抜けない。

秀吉暗殺の注文主は堺の豪商・今井宗久(三島雅夫)で、宗久の養女として重蔵に近づいてくる小萩(高千穂ひづる)が実は甲賀のくノ一だった。
三島雅夫は出番は少ないが〝怪優〟ぶりはいつもの通りで、これが良い。
今井宗久は商人であり茶人で、千利休・津田宗及と並び称せられた人物。
小萩がくノ一としての任務を忘れて重蔵に惹かれていき、重蔵もいつしか小萩を愛し始める。
いかにも怪しげで、しかし男の虜になっていく女を高千穂ひづるが艶めかしく演じている。
大友柳太朗の演技にはまったく恋愛感情が見えないのだが…。

この物語は、秀吉暗殺(目的が原作と異なっているが)をめぐる活劇に加えて、重蔵と小萩のラブ・ストーリーが大きな柱になっている。
そこに添えられるように、伊賀忍者の頭領の娘・木さる(本間千代子)と下っ端忍者・雲太郎(河原崎長一郎)というもう一組の忍者の恋がある。
映画は活劇の方に比重を置いているから、この二組の忍者どうしの恋模様は見事なまでに雑に扱われていて、この4人が4人とも何故いつの間に相手を愛するようになったのか、皆目わからないのだ。

主軸の秀吉暗殺作戦は、当然ここで秀吉を死なせるわけにはいかないから、原作のとおり重蔵は思いとどまる。というか、やめてしまうのだが、この重要な場面が軽すぎる。
とはいえ、重蔵と秀吉の会話や、重蔵の独白をダラダラ続けてはせっかくスリムな活劇にしたことが台無しになるから、この程度でやむを得ないのかもしれない。

作中には歴史上の実在の人物が何人も登場する。
さすがに忍者たちは架空だが、葛籠重蔵と風間五平という二人の忍者が豊臣秀吉のいる伏見城に忍び込んだという伝説がどこかに言い伝えられているそうで、これは驚きだ。

あの小説をこんなにコンパクトにまとめる力が、この時代にはあった。
内容の賛否はあるかもしれないが、気軽に楽しむ娯楽として製作する当時の姿勢と能力は評価したい。
長尺の映画が評価されがちな昨今、こういうのもだいじだと思うのだ。

そして、重蔵と小萩は、木さると雲太郎が待つ「梟の城」へと馬を駆るのだった。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
kazz

3.5 敵味方の忍術合戦とか、不可能を可能とする忍者同士の知恵とか技を期待して観ると辛い時間となります

2025年5月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

忍者秘帖 梟の城

1963年3月公開
東映、カラー作品
豊臣秀吉暗殺を狙う伊賀忍者の物語
なのに、面白くない
画面は暗く、展開にメリハリはなく観る側は睡魔に何度も襲われ防戦一方になるばかり
冒頭こそ、これは面白そうだと思わせるのですが、たたまち失速します
くノ一の小萩の登場シーンだけ面白い
とはいえ伏見城に潜入してからは、さすがに面白くなりますが短いです

忍者としてより人間として生きよう
それが本作のテーマだとエンドマーク寸前であかされます
なるほど小萩のシーンが良い訳です
敵味方の忍術合戦とか、不可能を可能とする忍者同士の知恵とか技を期待して観ると辛い時間となります
同じ1963年の工藤監督作品なら「十三人の刺客」の方が遥かに面白いです

コメントする (0件)
共感した! 0件)
あき240

4.0 忍びが憎しみに生きるとき

2024年9月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
しゅうへい

他のユーザーは「忍者秘帖 梟の城」以外にこんな作品をCheck-inしています。