人間魚雷出撃す

劇場公開日:

解説

元艦長橋本以行、元軍医長斎藤寛、元回天搭乗員横田実らの手記を基にして「沖繩の民」の古川卓巳が脚本・監督した戦記物。撮影は「愛は降る星のかなたに」の横山実。主な出演者は、「月蝕」の石原裕次郎、「沖繩の民」の左幸子、長門裕之、「乳母車」の芦川いづみ、「泣け、日本国民 最後の戦闘機」の葉山良二、「夏の嵐」の津川雅彦、「愛は降る星のかなたに」の森雅之、「隣の嫁」の三島耕、他に二本柳寛、内藤武敏など。

1956年製作/85分/日本
配給:日活
劇場公開日:1956年12月26日

ストーリー

昭和二十年七月初旬、すでに敗戦の色濃い瀬戸内海では特攻兵器、人間魚雷回天の潜航訓練が続けられていた。柿田少尉、黒崎中尉、久波上曹、今西二曹ら四人の回天搭乗員は、やがて訓練を終り、それぞれ自宅に別れを告げ、七月十八日、潜水艦伊号58に取付けられた回天とともに出撃の途についた。豊後水道から太平洋へグァム→レイテ海域に入った二十八日、伊号58は大型油槽船を捉えた。直ちに回天戦用意の橋爪艦長の声がとび、柿田、黒崎、久波今西の四人は、それぞれの艇に乗組んだ。ところが出撃の命令にも黒崎の一号艇が突然の故障で動かず、久波の二号艇と柿田の三号艇が飛出した。二人は油槽船と護衛の駆逐艦を撃沈し目的を果した。黒崎は艇の故障に悄然、今西の四号艇で次の機会に出撃させてくれと橋爪艦長に頼んだが、なだめられた。翌日、月夜の洋上に伊号58は再び大型艦を捉えた。夜のため回天攻撃は不利と魚雷戦に切換えられ、大型艦を撃沈。沈んだ艦は広島、長崎へ落す原爆をテニヤンへ運んで帰途につく重巡インディアナポリスであった。沸返る艦内。しかし黒崎と、出撃をはやる今西の心は暗い。決死の覚悟で来た二人に生きて帰れることは心が許さなかった。やがて伊号58は大船団を捉えた。今西は今度こそと回天に乗組んだが、故障事故の為艇を降りる。伊号58は急きょ魚雷で空母と巡洋艦を撃沈した。だが猛烈な駆逐艦の爆雷攻撃が始まり遂に艦内に浸水、殆ど絶望となった。これを見ると黒崎と今西は、手動で回天を走らせ駆逐艦を攻撃、伊号58を救おうと決意した。二人の攻撃で間もなく駆逐艦を倒したが、彼等も同じく海底に沈んだ。伊号58は浮上、艦橋には涙をたたえた橋爪艦長の姿があった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

映画レビュー

3.5潜水艦内のセットが見事

2021年6月30日
PCから投稿

神風特攻隊と並ぶ非人道的な人間兵器、回天魚雷を描いた作品だ。本作は、アメリカの戦後軍事裁判のシーンから始まるのだが、回天魚雷と載せて潜水艦、伊58号の艦長の証言から証言台に立っている。その後、米国メディアに囲まれ、伊58が撃沈した船が、原発を運んだインディアナポリス号であったことへの質問がある。もしインディアナポリス号の往路で撃沈できていたら、広島と長崎の被害はなかったかもしれない、と観客に思わせる。しかし、本作は人の命を武器として使う回天魚雷を題材にしている。一方に無辜の市民の大勢の命があり、もう一方には命を武器にさせられた若者がいるという構図を見せる。どちらも悲劇的で、責任者は常に命の選択を迫られていた。
潜水艦内のセットのリアリティが素晴らしい。絶妙に狭苦しく、酸素欠乏の時の対処法など、なかなか他の映画で描かれないような描写がある。全編、淡々と描写しているのがかえって生々しさを感じさせる。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
杉本穂高

2.5肩の力を抜いて観る娯楽映画でした。

2022年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

前回鑑賞の『硫黄島』の流れで、今度こそモノクロの戦争残酷物語系を観たくてチョイスでした。
ところが、これがどっこい、戦争の悲惨さだとか、不条理さだとか、悲哀だとか、そういうのは一切なしの作品でした。
まるで戦時下のプロパガンダ映画のように、ストーリーやキャラクターが、美化されて描かれていたです。
あたら若い命を散らせるカットでも、悲壮感はまるで感じられませんでした。
むしろ、それがカッコいいという風な描写でした。
観たかったのはコレジャナイ!

「本当は死にたくないのに、死にに行く」みたいな悲しさだとか、惨たらしさを期待していたのに。
ストーリーも特にひねりや意外性や感動はなしでした。私はごくありふれた風の平坦に感じました。
石原裕次郎始め、おのおのの俳優さんの活躍?が美化されて描かれていたです。
オープニングクレジットの出演者を見てみると、お馴染みの俳優さんが、ずらりと並んでいたです。
西村晃、岡田真澄、高品格、津川正彦 等、あまりにも当然のことなのですが、みなさんお若いのなんの。
そのお姿を拝見できただけで☆1個です。+☆1個は、特撮にです。お話しとしては☆0.5個なぁ。
映像の迫力は、それなりにありました。
当時としてはかなりがんばったであろう特撮と、操舵室/魚雷装填室?の描写のカットの構図が大変よかったです。(あくまでも当時の技術的にですが…)
あと、あれはもしかすると記録映像だったかもしれませんが、そのカットの使い方も見ごたえがありました。
これは肩の力を抜いて、娯楽映画として観る映画なんだろうな…と思った次第です。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
野球十兵衛、

2.5特攻人間魚雷回天

2021年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

一人用の特攻潜水艇、回天を4基搭載した潜水艦が出撃、特攻隊員4人が死に向かうまでの葛藤を描く。
4人の背景が淡白なので、とてもあっさりした印象。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
いやよセブン

4.0米巡洋艦インディアナポリスを撃沈した、イ58の乗組員の行動や会話の映画

2021年2月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1.潜水艦の中を見ると → 狭さ、雰囲気、用語が懐かしい
2.楽しい映画ではない
3.80分の出撃は、少し泣ける

4.インディアナポリスの説明=乗員1199名
 ①1945.7.26、原爆をテニアン島へ運んだ→後日、広島・長崎投下
 ②1945.7.30、深夜00:30頃、イ58の魚雷により沈没
 ③極秘任務の為、護衛の駆逐艦なし → 沈没も発見も遅れた
 ④救命ボート13隻=ボートに乗れない乗員は、淵に掴まる
 ⑤約5日間の漂流中、体力消耗や、鮫の襲撃で死者が発生
 ⑥生存者は、当初、約900名いた → 8/2=哨戒機が初めて発見
 ⑦その後も救出作業継続し、救出完了時の生存者は316名
 ⑧「米海軍最悪の惨劇」と、表現されることもある

5.マクベイ艦長の説明
 ①1945.12月、マクベイ艦長は、
   「ジグザグ航行しなかった」ので軍法会議 → 有罪
 ②米軍は、大戦中、約700隻の艦艇を失ったが、
   撃沈されて軍法会議は、マクベイ艦長のみ
 ③判決後、海軍長官へ寛大な処置の嘆願があり、長官は承認
 ④1946.2.23、ニミッツ作戦部長により判決撤回、艦長は、無罪となる
 ⑤艦長は、遺族からの非難等が続いた為、1968.11.6拳銃自殺
 ⑥1990年代後半から、マクベイ艦長の名誉回復活動が始まった
 ⑦攻撃したイ58の橋本艦長も、名誉回復活動に参加
 ⑧1999.11月、橋本艦長が米議員に嘆願文書を送る
 ⑨米議会で、マクベイ艦長の汚名返上の決議採択
 ⑩2000.10.30、クリントン大統領が署名
   → マクベイ艦長の名誉回復
 ⑪なお、橋本艦長は、(大統領署名の5日前)2000.10.25死亡

コメントする (0件)
共感した! 1件)
KEO
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る