東京兄妹

劇場公開日:1995年1月14日

解説

都電が今も走る昔ながらの街に、二人きりで暮らす兄妹の日常風景をスケッチ風につづった作品。監督は「病院で死ぬということ」の市川準。人々の生活の様子などドキュメンタリー風の映像をドラマの合間に織り込んだ独特の語り口が今回も印象的。ベルリン国際映画祭正式参加、エーテボリ映画祭正式参加、シンガポール国際映画祭出品。95年度キネマ旬報ベストテン第2位。

1995年製作/92分/日本
配給:ギャガ・コミュニケーションズ=ライトヴィジョン
劇場公開日:1995年1月14日

あらすじ

両親を亡くし、兄一人妹一人で暮らしている日暮兄妹。兄・健一は古本屋に勤め、妹・洋子は高校卒業後、駅前の写真ラボ屋で働いていた。二人が生活している町は都電が走り、昔ながらの商店が並び、醤油の貸し借りをするような近所づきあいの残るちょっと古臭い町だった。健一は一家の生計を支える存在として関白であり、その態度は毅然としていた。洋子もそれを当然のことと受け止め、家事の一切と兄の面倒をよくみた。健一には恋人の桂子がいたが、妹が二十歳になるまで結婚は待ってくれという彼の言葉に愛想を尽かした桂子は、健一と別れてしまった。数日後、健一は家に友人で写真家の真を連れて帰って来る。洋子は真の顔を見て、彼が洋子の勤めるラボ屋にちょくちょくやって来る客だったことに気付いて驚いた。二人はそれ以来デートを重ね、洋子は家を飛び出して真と同棲を始めてしまう。胸中穏やかではない健一は、洋子に帰って来るように電話をかけるが、願いは聞き入れられなかった。だがある晩、飲み屋で泥酔した真が急死する。傷心の洋子は行き場を失い、真の葬儀があった夜、家に戻って来るのだった。こうしてまた日暮家の日常が再開された。しかしある晩、勤めから戻った健一は、門を潜りかけたところでその足を止め、再び表へ出て行ってしまった。彼の帰りを待っていた洋子は、その時、門の鈴の音が聞こえたような気がして顔を上げた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.5 「メモワール市川準Vol3 兄の哀切さが映像表現と音楽だけで強く伝える製作スタイルは不変だ」

2026年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

斬新

 なんと残酷な映画だ。兄と高校三年生の妹と二人暮らし。いつ両親が亡くなって、いつから二人だけで暮らしているのか、市川準はまったく説明しない。ただ、兄と妹の生活はあまりにも日常で、息の合う夫婦のような暮らしぶりだ。洋子は無事高校を卒業し兄に感謝する。仕事に行く洋子が着替える。カメラはブラジャー姿の洋子をあえて映す。このワンショットが洋子の大きな転換点を意味する。

 兄には恋人がいた。ただ洋子が二十歳になるまで結婚を待って欲しいというが、相手はもう待てないと断言する。兄は一晩家をあけ、朝帰りする。翌朝の明るい陽射しをうけて倦怠感につつまれる兄。街を歩く人々の映像の積み重ねが、なにもすることなくただ座っている兄の街への埋没感を表現している。

 この映画は何度冬を越したのだろうか。ファーストシーンの真夏はいつの夏なのか。この映画はずっと冬の映画だ。洋子が働き始めて、兄には思いがけないことがおきてしまう。妹があっさりと「女」になってしまったのだ。兄は毎日帰りを待つが一向に戻ってこない。残酷だ。兄が飲み屋で他のお客にからむ。豆腐のことを、妹に重ねて話す姿には哀れさしか感じない。

 洋子はようやく家に帰ってくる。家に迎い入れる兄の一言には妹への愛に満ちていた。兄は妹が戻ってきて、以前の日常が始まるが、妹の間にできてしまった深い溝を感じる。今の妹はもはや「女」になってしまったからだ。

 兄役の緒方直人は、あっさり妹に裏切られた心の揺らぎを見事に演じている。自分を犠牲にしてまで大切に育てた妹をちゃんとした形で結婚させたかったという願いが根底にあったからだ。妹役の栗田麗は難しい役どころをほとんど表情を変えず演じていた。市川準監督は、これまでの作品と同様、役者の肉体を借り、映像を積み重ねることで兄と妹のすべての感情と思考を映像で描き切っていた。

 ファーストシーンの夏は、妹が家に帰ってきてから何度目かの夏であろう。家に帰ってきた妹が風呂場で身体を拭いているとき妹の乳房は露出している。妹がもはや「女」であることを強く印象づける。兄は昼間からビールを飲み、冷奴を食べ、横になっている姿は、生活の倦怠感と諦念が伝わってくる。

ラストシーンはとくに哀切が漂っていた。緒方直人が玄関を開ける、その音を栗田麗が聞き反応する、しかし、というエンディングは、兄の哀切さを増幅しやはり残酷な映画だと思わせる。梶浦由記の郷愁と哀愁の漂う音楽が、映画の空気感を色濃く反映しているのがとてもよかった。市川準監督の映像で表現するスタイルは不変だった。

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かな

3.5 小津と現代

2026年1月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

癒される

これも市川準監督没後、しかも2014年にDVD化されてから初めて観た。

公開当時から多くの人が指摘していたが、明らかに市川監督が敬愛する小津安二郎を意識した映画である(市川本人は小津へのオマージュという評価は必ずしも肯定はしていないようだが)。ただ正直言って、その小津的世界観が(公開当時の)現在の現実とすでに合わなくなっていたためか、どうにも不自然さがぬぐえなかった。いつもの野外ロケで街の風景を映し出す市川監督の映像は当時の空気を感じさせてなんとも懐かしいんだが、そのロケで映される現代の風景に主人公兄妹の古い一軒家の佇まいや室内が上手く馴染んでなくて、なんだかちょっと浮いてしまっている。また個人的には兄妹の関係性も非現実的に感じられ、有り体に言えばちょっと気色悪くて受け入れにくかった。

とはいえ市川監督だから全くつまらないわけではないんだが、どうも小津リスペクトが過ぎて市川監督の個性が若干死んでしまっているような気がした。決してつまらなくはないんですけどね。

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バラージ

3.0 粟田麗

2017年7月2日
iPhoneアプリから投稿

冒頭朝風呂を浴びる粟田麗にやられる、というか、これを挟み込んでくる市川準にやられる。

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pigeyes

5.0 生活が美しい

2014年8月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

幸せ

カメラポジションが絶妙。
音楽もよい。
食べるという行為や、時間が経つ美しさがほんとに画面に溢れている。
ゆっくり生きてないと撮れないな。
何事もほどほどに生きていきたい。

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チーズ