劇場公開日 1974年12月28日

「石井照男はどこまで小学生なのか(絶賛)」直撃地獄拳 大逆転 じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0石井照男はどこまで小学生なのか(絶賛)

2020年12月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

僕はこの映画を、20年以上前に一度観ている。

おそらく場所は、川崎の名画座。当時、新入社員だった僕は、土日になるとそこに入り浸っていた。
タバコは上映中も吸い放題、三本立てで1000円程度と、浅草っぽい安小屋だったが、雨が降るとホームレスが紛れ込んで、館内が猛烈に臭かったのをよく覚えている。あと、二本目くらいになると激しくケツが痒くなってくる(間違いなく何かが居た)ので、僕はいつも下にビニルシートを敷いて観ることにしていた。
千葉ちゃんだけじゃなく、渡瀬恒彦特集とか、梶芽衣子特集とか、とにかく血沸き肉躍るプログラムピクチャーの宝庫だった。ああ、何もかもが懐かしい。

閑話休題。
で、20年ぶりに観た本作、前作の『直撃! 地獄拳』とごっちゃになってるのみならず、『牙』とか『殺人拳』とかいろいろ記憶が混濁していて、ほぼ新作のごとく楽しめた。
かろうじてはっきり覚えていたのは、天井伝いに接着剤で金庫を目指す『ルパン三世』みたいなシーン(むしろこっちが元ネタか)と、マフィアのボスの首が一周するところくらいか(他でもやってたけど)。
いやあ、改めて観て思った。
くっだらなくて、マジ最高!!

正直、作品のオフビートでおバカなノリにアジャストするまではかなり時間がかかってしまい、前半は辟易ながら観ていた部分もある。
とにかくノリが古い。汚い。適当だ。
演技も今となっては荒っぽい。
外人の演技があんまりだ。
笑いたくても笑えない。
うーん、だめなのか?

でも、山城新伍の二役が出てきたあたりから、何かがふっきれた。
自分の中でふっきれたってのももちろんあるだろうが、映画自体ぐぐっと加速したというか、ネタの密度があのあたりからぐわっとあがったような。
東映ピンキーでも、新伍ちゃんが出てくるといつも映画の空気ががらっと変わる。

僕は、肥溜めに置き去りにされた郷鍈治に、腹をかかえて笑った。
力ずくで笑わされた。「ツボ」に入った。

そのあとは、レストランのすっとぼけギャグも笑ったし、セスナのドタバタも笑ったし、トンチキのカチカチ山にも爆笑した。もちろん、目ん玉の飛び出すホタテマンも、頭が一回転する名和宏も素晴らしかった。
要するに、僕はこの映画にきっちり馴化され、アラカンが網走に出てくるセルフパロディめいたラストまで、げらげら笑いっぱなしだったのである。

本作における石井照男の「笑い」は、ただひたすらに、小児的である。

うんこ。
しっこ。
おなら。
おっぱい。
おしり。
そんなんばっかり(笑)。

あとは頭に卵、ケツに火、でかいたんこぶ、
とにかく徹底して行われる、トンチキに対する「いびり」に近い「いじり」。

幼稚園児や小学生でもげらげら笑う、根源的で肛門期固着的な鉄板ギャグが連発される。

ああ、石井照男はなんて少年のような心を保っているのだろうか。

そこには、PTAへの慮りもなければ、知的で高尚な笑いを目指すスカした姿勢もない。
ひたすらおおらかに、ただ天真爛漫に、「シモ」と、「エッチ」と、「いびり」に全力投球して、誰よりも監督本人が心底から笑いころげてる。
子供だ。大人なのに子供のままの人がここにいる。

こういう人だから、B級でもなんでも、これだけ面白い映画が撮れるんだろうなあ。
そう思わざるを得ない。

キャストについていえば、やっぱり千葉ちゃんは最高!
あのフェンスをひょいと乗り越えられる俳優が、どれだけいるだろうか?
いま、これだけ圧倒的なオーラを放つスターが、どれだけいるだろうか?

久しぶりに、4本立てでサニー千葉オールナイトとか観に行きたくなりました。

じゃい