大殺陣

劇場公開日:1964年6月3日

解説

「十三人の刺客」の池上金男がシナリオを執筆「十三人の刺客」の工藤栄一が監督した時代もの。撮影は「関の弥太ッぺ(1963)」の古谷伸。

1964年製作/119分/日本
原題または英題:The Great Duel
配給:東映
劇場公開日:1964年6月3日

あらすじ

四代将軍家綱が危篤に陥入り、大老酒井忠清は将軍継嗣に弟綱重を立てようとする、粗暴な政治が行われていた延宝六年のこと。若年寄堀田正俊は、御政道の変革を計る企みありと喚問された。一方、追手から逃れて来た知友中島外記を隠まったため一味とみられた、書院番神保平四郎は、旗本浅利又之進と名のる男の屋敷にかくまわれた。妻加代が事件のまきぞえから殺害されたのをみやから聞いた神保は、御家人星野友之丞に紹介されると一党に加わった。捕われた仲間の自害にいやけがさした一党の一方のかしら石岡部源十郎は、別所隼人に、秘密を酒井に話そうともちかけて神保に斬られた。首謀の名を追求する北条は石岡から一党の首謀は軍学者山鹿素行と聞くが実証なくして、山鹿に手を出すことが出来なかった。素行以下の一党の顔ぶれは、星野友之丞、別所隼人、神保平四郎、日下仙之助、助七、渡海八兵衛、素行の姪みやの七人であった。全て、すさんだ政道を正すためにけっ起したのだった。目的遂行の日は、水戸中納言光圀公が、国表に帰国でにぎわうのを、利用して甲府宰相鋼重の行列を吉原の方へ導き入れ本懐をとげる。だが渡海の裏切りに会った素行らは、神保、星野、日下、別所、助七の五人は目的の甲府宰相を暗殺出来ず世を去った。行列の遅いのに不審を持った酒井は、徒目付の知らせで事の次第を聞くと、行列を日本堤に廻すよう命令した。そのようすを見ていた浅利又之進は、無残な神保の死体をみて憤怒し、吉原を出る行列に突進していった。北条と宰相をうって、命を落した浅利を見て、発狂する酒井の姿をみつめながら、素行は、勝利感に酔えない自分を感じていた。

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映画レビュー

3.5本作は日本で数年早く撮られたアメリカンニューシネマであると思えば理解が早いかも知れません

2025年5月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

大殺陣
1964年6月公開
東映、白黒作品
監督工藤栄一

圧倒的につまらない
カタルシスもない
何をいいたいのか皆目分からない
終盤の暗殺襲撃シーンの迫力だけは確かに迫力があり、ようやく観るに値したと、それまでの辛抱が報われます
序盤の老中側のテロリスト容疑者一斉検挙に向けての手順確認シーンなどはリアリティ重視の作品であると明確に主張していて、これは期待できそうだと思えたのに、中盤に向かってテロリスト側の描写になるにしたがって急速につまらなくなります
十三人の刺客のような綿密な襲撃側の計画と防備側の作戦との頭脳戦が有るわけでもなく、登場人物の誰にも観客は感情移入ができないのです
しかし、脚本は検挙を逃れて潜伏するテロリスト側に感情移入させようとするのですが、なんら共感できないまま、終盤の「大殺陣」に突入します
その殺陣すら画面の迫力はものすごく、お約束のチャンバラではない映像を観せてくれますが、斬られるのは非武装の中間(武士ではなく、行列の為に雇い入れられた町人)ばかりの一方的な殺戮なのです
画面の恐るべき迫力には瞠目させられても、観客にはカタルシスはないのです
この内容では、本作のタイトルが「大殺陣」なのは、そうとしか表現のしようが無いとさじを投げたものだとわかります

結末は体制側が慢心をつかれ敗北
し、反体制側が勝利してもなお、観客は置いておかれます
老中の発狂シーンは後年の「柳生一族の陰謀」でオマージュされているように印象的ではあっても、観客は置いておかれたままエンドマークを迎えてしまうのです
テロップがでても、ふーん、やっぱりそうなったのかというだけのなんの感慨ももたらさないのです

つまり、本作には、従来の時代劇のような勧善懲悪も、舞踊のような様式美の殺陣も排して、現代に通ずるリアリティに立脚した時代劇を確立するのだという意欲に溢れている作品であった訳です
そこが本作の画期的な点なのだと思います
しかし、本作の現代性とは、大衆は反体制を無条件に支持し熱狂するものだということに立脚しているのです
反体制側の辛苦や、女性は身体をなげうち、父親は妻や幼い子供達を斬ってまで反体制闘争に心血を注ぐ姿に大衆は深く共感し感動もし、熱狂して支持するのは当然だという姿勢なのです

脚本が要求するような反体制側の立場に立って観客が本作を観るならば、もしかしたら大きなカタルシスが訪れるのかも知れません
しかし結果は、まるで不発に終わった60年安保闘争のように、大衆の心は動かなかったのです

前作の十三人の刺客が体制側に立脚した物語であったことへの反省が本作をこのようにしたのかもしれません

しかし工藤監督の3年後の「十一人の侍」では、大幅な起動修正が行われて、体制側への反体制闘争という視点は排除され娯楽映画として徹底されることになります
その作品での吉原での襲撃未遂シーンは本作からロングパスであったと思います

本作は日本で数年早く撮られたアメリカンニューシネマであると思えば理解が早いかも知れません
1968年2月日本公開の「俺たちに明日は無い」とか1970年2月日本公開の「明日に向かって撃て」の時代劇版だったのかも知れません

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あき240

3.5集団時代劇の名作!古典だが斬新!

2021年8月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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怖い

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野川新栄

4.0ためてためての

2020年11月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

大満足。
画面の隅々まで行き届いた美意識。
登場人物たちの命の軽さ。
ためてためて最後のどろどろの殺陣。
最っ高。
手持ちカメラの切り合いも新鮮であったよ。

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あした

4.0世直しテロリストたちの捨て身の作戦

2020年11月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

『十三人の刺客』に続く工藤栄一監督の「集団抗争時代劇」第二段。
NHK BSプレミアムの放送は『十三人の刺客』より一週先だったが、録画して公開時系列に鑑賞。
次作『十一人の侍』も放送してほしいが、それはないらしい。

前作同様に、池上金男の脚本と工藤栄一の演出はドライでリアルだ。
が、前作よりもドラマ性が高まってはいる。
主人公(だと思う)平四郎(里見浩太朗)は、理不尽に妻を斬殺されテロ計画に巻き込まれる。侍が作った世の中の元凶は「俺のように役職を大事がった侍、オヌシのように世をすねてなにもせぬ侍ども」だと遊び人風の武士又之進(平幹二朗)に言う。
テロリスト一党の首謀者の姪みや(宗方奈美)は、弱気になった仲間の男を体で慰めたり、仲間に引き入れたい別の男に犯されたり、大義のために女であることを犠牲にし、非業の最期を遂げる。
子だくさんの貧乏浪人(御家人か?)星野(大坂志郎)は、決戦前夜に子供達に贅沢な弁当を食べさせて、妻もろとも命を奪う。
みやと平四郎の一瞬のロマンス風な場面もある。

手持ちカメラの揺れが激しく、決して観やすいとは言えないものの、ローアングルは前作以上に徹底され、さらにパースペクティブを強調した構図を多用するなど、工藤映画芸術は冴えている。

クライマックスは田畑や小川、町中を舞台に町民を巻き込んだ大乱戦となる。
襲う側も恐怖心にかられ、攻防お互いに必死だ。
そして、予想だにしない結末を迎える。数ある時代劇の中でも斬新な決着のつけ方ではないだろうか。

それにしても、この平幹二朗は平岳大そっくりだ。(逆か…)

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kazz