雪華葬刺し

劇場公開日:

解説

京都を舞台に、天才刺青師を中心に、複雑に絡み合う人間関係と、背中に刺青を入れる女の姿を描く。脚本は「団鬼六 蒼い女」の桂千穂、監督は「蔵の中」の高林陽一、撮影は藤井秀男がそれぞれ担当。

1982年製作/103分/日本
原題:Irezumi-Siprit ih the Tattoo
配給:松竹
劇場公開日:1982年11月27日

ストーリー

図書館に勤めていた茜は、上司、藤江田の激しい求愛に結婚を決意した。藤江田には背中に刺青を持つ菊岡春菜という情婦がおり、彼が刺青に強く惹かれていることと、春菜への嫉妬から茜も刺青を入れる決意をする。そして、茜は日本一の刺青師といわれる京都の彫経を訪ねた。彫経こと大和経五郎は、かつて妻に自分の信じる刺青の入れ方をやって逃げられ、それ以来、養女の勝子、弟子の春経と共に友禅染めの下絵書きとして生活していた。茜の申し出を渋る彫経だが、彼女の美しい肌に承諾をする。全裸になった茜の下に、何と、やはり全裸になった春経が横たわり、彼女の中に強引に入ってきた。経五郎の刺青の彫り方は、痛みをこらえるだけの肌を避け、肌の一番良い状態という性交中に墨を入れるというものだった。茜は衝撃と嫌悪を感じるが、次第に痛みと官能の繰り返す波の中に酔っていく。数日の後、茜は春経に心を惹かれるのを感じる。そして、経五郎一世一代の力作といってよい、国芳の〈本朝武者鏡橘姫〉の彫りものが完成した。さらに、経五郎は刺青の仕上げとして、弟子の春経に、人間の肌で一番痛さを感じる腋の下に、雪華の図を彫ることを許した。その茜が久しぶりに京を訪れたのは、経五郎の訃報を受け取り、刺青を入れたときの約束である、最後の一針を入れる儀式“葬刺し”を受けるためだった。霊前に座った茜は勝子から意外なこと聞く。春経が自殺したこと、そして藤江田の情婦の春菜が、実は経五郎の元の妻で、二人の間に生まれた子供が春経だった。春経はとあることから、自分の師匠が父であることを知り、母に一生消えぬ重荷を背負わせた父を憎み、経五郎の目の前で刺青の短刀を突きたてて死んだという。密かに慕っていた春経と、養父を失うという二重の悲しみにくれる勝子の手で、茜は“葬刺し”を受けた。茜は一生消えない重みを背に感じながら京都をあとにするのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5【耽美の世界、ここに極まれり。赤江瀑の妖艶なエロス全開作。若き京本政樹さんが魅力的です。】

2021年2月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

■私事で、恐縮であるが、作家、赤江瀑の存在を知ったのは彼の異能の作家の晩年である。
 が、その土着文化、歌舞伎(赤江瀑は歌舞伎にも精通している。晩年、歌舞伎の本も刊行している。)などの素養を取り入れ、京都の寺社仏閣を舞台にした、蠱惑的な世界観を醸し出す書物の数々に一発でやられ、古書店を回り数年かけて、全冊揃え、読み耽った。
 だが、その後、赤江瀑のアンソロジーは、定期的に発刊され、”彼の人の世界に嵌る人は多いのだなあ・・、と思ったものである。
 最新のアンソロジーは、河出書房新社から、昨年6月に刊行された「赤江瀑の世界 花の呪縛を修羅と舞い」である。
 嗚呼、くらくらする・・。

◆この映画の原作、「雪華葬刺し」は、赤江の数ある掌編の中でも、匂い立つほどのエロティシズムが印象的な、傑作である。

・京都を舞台にした、刺青師、「彫経」に図書館員であった、茜(宇都宮雅代)が”ある事情”から、自らの身体に
”国芳”の「本町武者鏡。橘姫」を彫って貰うのだが、その様が、凄い。
鍼の痛さを紛らわせるためか、「彫経」の弟子、春経(京本政樹)の抱かれながら、肌に”国芳”を彫られていく様。
 春経の身体には、全身”国芳“が彫られているのである。はんなりとした京都弁を口にしながらの、饗宴・・・。

<嗚呼、クラクラする・・。>

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