劇場公開日 1974年6月29日

「凄味ある、粘りの神代演出」青春の蹉跌 こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0凄味ある、粘りの神代演出

2009年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本映画の歴史の中で、神代辰巳の存在は奇異で特異かもしれない。しかし、名作と呼べる作品を多く排出している名監督であることには間違いないと思う。

ただ、日活ロマン・ポルノの作品が多く、人に、特に女性にあまり勧められないのが辛いところなのだが、この「青春の蹉跌」はショーケンと桃井かおりという、一世風靡した俳優が共演した、神代の一般映画の中の名作の一本だ。
 まだ学生紛争が残る時代に、奔放な短大生と一流企業の娘の二人と付き合うアメフト部の学生を描いたこの作品は、石川達三の原作からはかなり逸脱した内容だ。実は、この作品の脚本を書いた長谷川和彦は、東大のアメフト部出身で、学生紛争も経験している。この作品は、長谷川の経験からくる人生感が大きく反映しているように思う。

長谷川和彦の色が強い内容ながら、神代監督らしい粘りのある演出は随所に見られる。特に「えんやーとっと...」とつぶやきながら、混沌とした世の中を渡ろうとする主人公のショーケンが、ラスト20分に、雪の中を桃井かおりを背負う演出は見ごたえ充分だ。そこには、自分が結婚相手に選ぼうとしている大企業の娘よりも、奔放な女とに宿命が存在していることを表現している。その表現力は、観る者をょ圧倒している。

神代が描く男女には、運命や宿命が常に存在している。だからこそ、他の監督よりも男女の繋がりに粘りを込める。今、あっさりとした演出が多くなっているだけに、もう一度、神代監督の作品を再評価してほしいと思う。

こもねこ