劇場公開日 1962年11月18日

「チャンソバ屋=瓢箪 魚編に豊=秋に刀の魚」秋刀魚の味(1962) コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5チャンソバ屋=瓢箪 魚編に豊=秋に刀の魚

2022年8月4日
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内容は、娘を嫁に出す前の父親の気持ちと主人公家族を中心とした群像劇。作品の中に、人生の後悔。真実と嘘。時代錯誤。脆弱己。葛藤と時代性。諦観と希望。絶望と夢。様々なテーマを盛り込んだ小津安二郎作品最後の作品。好きな言葉は『一人になってしまったなぁ…』主人公が嫁に出した娘を思いやる台詞が時代性を感じる。戦後間も無く生きた時代を懐かし見るような言葉は常に繰り返されて監督の諦観に似た言葉だったのかもと感じる所があったからだ。好きな場面は『燕来軒』ひょうたんの経営するソバ屋の屋号を背景に、杉村春子が嫁に行き遅れた後悔と絶望で、酔って老いた父を横目に右向きで涙を🥲流すシーンと対をなすシーンで主人公が餞別を持って来て帰った後『燕来軒』の看板を背後にしつつ、ひょうたんが仕事着のまま深い溜息と絶望に沈んだ目で、右向きに同じ位置に腰掛けるシーンに唸りました。…‥その名前も『燕来軒』嫁に行き遅れた娘に若い燕が飛んでくる様にとの父の思いもあったのかと思うと寂しさが倍増して味のあるシーンだなぁと感じました。その他にも様々なメッセージが豊富にあります。戦後間も無く傷跡深く残る時代の背景もよく分かります。海岸式の敬礼(恥を立てない甲板の上では邪魔になる為)支持する場面は長く戦争の辛さと懐かしさを思う時代だったのかもと思いつつ良い歴史的資料になりました。冒頭の工場の🏭が5本がこの主人公の家族の様で、父に借りた5万円の様でそれぞれ煙に巻く思いが複雑に絡み合いお互いに人の気持ちが分かり合えない事が、人間として社会生活上で過去にも現代にも通じる問題だと思います。お互いの分かり合えない寂しさのと結果人は『ひとりぼっちになってしまった…』そうなのかもと言う監督の思いが込められてる様で深い考えには感慨深い物があります。ミッドポイントで岩下志麻が兄さんの部下と駅で🚉話する場面も折り返しにはピッタリだと思いました。その後に工場の🏭と煙に気持ちの揺らぎが感じられ素直に目に入る表現は素晴らしい。最後の階段下で左向きで寂しげに、でも娘の幸せを切に願う父親の気持ちとそれでも俯きながら座ってしまう背中には様々な思いが飛来し切なくなりました。見る人により様々な思いがあるかもわかりませんが、自分としては非常に見応えのある作品でした。

コバヤシマル