さらば映画の友よ インディアンサマー

劇場公開日:

解説

映画を一年に三六五本見ることを二十年続けるとうそぶく中年の映画狂と映画館で甘い夢にまどろむ青年の友情に一人の少女を絡めて描く。脚本、監督は映画ジャーナリストからこの作品でデビューする原田眞人、撮影は「戒厳令」の長谷川元吉がそれぞれ担当。

1979年製作/111分/日本
配給:日本ヘラルド

ストーリー

沼津に住む浪人生シューマは受験のことよりも映画館に通うことと早く童貞を拾てることに心をくだく一九歳。ある日、新宿まで遠出して映画を見ていると、場内にはペチャクチャうるさい女子学生がいたが、気の小さいシューマは注意一つ出来ない。その時一人の男がやって来て「お嬢ちゃん、人から愛されるように映画見る気ない?」と一言。だがその男、追払った女学生どもの陰謀で痴漢扱いされてしまう。シューマは彼の窮地を救い、男は映画館を出ると、いきなり「俺はあんたを知ってるぜ、ビッグ・マン。ニック・ビアンコだろ……」シューマは唖然、それは大好きな「死の接吻」のリチャード・ウィドマークのセリフだ。ダンさんと称するその男は根っからの映画ファン、またたく間に二人は意気投合した。シューマの実家は“ロード・ハウス”という喫茶店をやっていて、いろんな仲間が訪ねて来る。ある晩、二人の仲間とガールハントに出かけると、ミナミという少女に出合う。彼女はからんできたズべ公を、カミソリ片手に軽く一蹴、と思うと可憐な十七歳の少女に戻ったりシューマは面くらう。暫くして、草月ホールのフィルムフェスティバルの上映中止騒ぎの中で、シューマはダンさんと再会。ダンさんはそのまま沼津に住みついてしまう。映画三昧のなかでシューマはミナミと再会する。ミナミに惚れるシューマを心配するダンさんは、彼をキャバレーに連れていく。何と、そこにはホステスのミナミがいた。シューマはダンさんの策略を感じて絶交する。ミナミは姿を消してしまう。一九六八年が終って新しい年の最初の夜、シューマにミナミから電話が入り、再会を約束する。モーテルに入る二人、シューマは彼女の肌に本間という男の名の刺青を見つける。シューマは彼女を抱くことが出来なかった。「本間を殺してやりたい」と激しく口走るシューマを心配した父は彼を台湾旅行に送り出した。“ロード・ハウス”の客が東大闘争の実況に夢中になっているとき、一人シューマは台湾旅行の思い出に耽けっている。そんな所にダンさんが現われた。ダンさんはシューマの前に、本間の家の図面を広げると、拳銃を取り出した。シューマは絵空事を夢見るダンさんに腹が立ち、激しく罵った。呆然自失のダンさん、口借しさと屈辱の中で立ちつくしている。あたたかい冬の一日、インディアンサマーのようなある日、ダンさんが本間の家に殴り込んで死んだ。現場に駈けつけたシューマはパトカーに乗るミナミを見た。ダンさんが本間の止めをさしていると、銃を構えたミナミがやって来た。轟音とともにダンさんの身体が吹っ飛んだ。虫の息のダンさんは、股間に手をあてがって「か、かてえや」と一言咳いて死んだのだ。シューマは映画館に入った。スクリーンには「新・網走番外地」の高倉健の姿。シューマの目には健さんがダンさんに変っていく。後席で騒ぐヤクザにシューマは「お兄さんたち、人から愛されるように映画見る気ないですか?」

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0映画に生きる

2021年4月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

興奮

色々な映画へのオマージュ、拓ボンがちゃんとトラヴィスに見える、茶の皮ジャンが格好良い、もしかしてBETAS製か!?

シューマのあまりにも恵まれすぎな環境に嫌悪感を抱くこともなく素朴なキャラに好感が持ててしまう、室田日出男の意表を突いた父親像、コカコーラとか呼ばれてる奴とか集う連中が楽しい。

これ、原田眞人の監督デビュー作として最高で「KAMIKAZETAXI」も思い出すような似た雰囲気も、原田芳雄のカメオな出演、石橋蓮司はもう少し出番があっても、常に生きながら影響を与えてくれた映画を意識して生活があるダンさん、最後は「ダーティーハリー」や「タクシードライバー」を彷彿とさせるアメリカン・ニューシネマな如き、それよりも前の学生運動が盛んな時代に取り残された若くもない川谷拓三の魅力溢れる存在感。

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万年 東一

4.0映画狂いな拓ボン

2020年9月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

興奮

大好きな「カミカゼタクシー」の原田眞人監督のデビュー作。主演はこれまた大好きな俳優の川谷拓三さんと、自分にとっては夢のようなタッグの作品。タイトル通りの映画愛に溢れた作品で、渡哲也と吉永小百合の話題から始まり、「肉弾」や「雨に唄えば」、「座頭市」に「網走番外地」、黒澤明にゴダールなどなどオマージュとリスペクトに満ち溢れた内容に心が躍る。そして何と言っても「俺の人生の目的は1年間に365本映画を観ること、そいつを20年間続けること」とドヤ顔で言い放つ映画狂の主人公ダンさんを演じた拓三さんの圧巻の演技。ラストは「タクシードライバー」のトラヴィスをも彷彿とさせる狂気と孤独感がありとても悲しい。脇を固める俳優陣もこれまた素晴らしい演技。拓ボンの盟友レペゼン・ピラニア軍団・室田日出男氏の意外性のある役柄。父親でありオネェという複雑な役柄は高い演技力で観る価値十二分。そして原田芳雄。ゴダールを愛するアーティスティックな映画人という様な役柄でこちらも意外性があって凄く面白い。石橋蓮司のヤクザ役は相変わらずの味の良さ。刺青の入った浅野温子も魅力的でとても可愛い。
純粋な映画愛に満ち溢れた作品で素晴らしかった。映画好きならではのアルアルがたくさん詰まっている。映画好きならどこかしら共感できるものがあると思う。凄く映画館に行きたくなった。

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