「メスマ」CURE odeoonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
メスマ
いきなりエロ・グロな遺体描写、アメリカ映画によくあるB級サスペンスかと、ちょっと引き気味・・。記憶喪失の青年が出てくるが伏線だろうか、意味不明なシーンがだらだら続くので困惑気味・・。
その青年の名は上着のクリーニング屋のタグから田宮と言うらしい。警察の調べでは精神医学、心理学を学んでいた学生でメスマと呼ばれる催眠療法の研究者。メスマとは18世紀末に欧州で人気を博した催眠術の始祖「メスマー博士」の療法らしい。首を刃物で切り裂いた連続猟奇殺人の犯行の裏にはその青年のかけた殺人教唆の催眠暗示があったらしいというサイコサスペンス、最後には役所さん扮する高部刑事も暗示にかかったか微妙だが、精神病院から逃げた青年を撃ち殺しThe ENDかと思いきや、病院で胸を切られた妻文江の映像、包丁を持って歩くウェイトレス、ひょっとして青年の霊気が高部に乗り移り尚も殺人が続くと言うことか・・。
タイトルのCUREは治療という医学用語らしいが、治療どころか人殺し映画、青年は単なる異常者だったのか動機も読めず、倫理観の強い筈の教師、医師や警察官、刑事迄、猟奇殺人犯にしてしまうメスマの催眠術など理解できません。
当初のタイトルは「伝道師」だったそうです、高部の友人の心理学者・佐久間が言うには田宮は霊術の伝道師だったのではないかという推論。
佐久間が高部に見せたのは明治時代に村川スズという女性が霊術師にX字の軌跡を描く催眠療法を受けている動画。その後スズは息子の胸をX字に切り殺したという本作の事件と似通った話。動画は大学の催眠術の講義でも使われたらしいが田宮が観ていたかは定かでないが、霊術師と田宮はなんらかの結びつきがあったらしいので、その霊術の伝道師だったのではないかとの推論。ただ、伝道師では当時のオーム真理教の事件と重なりそうなので変えたそうです。
脚本・監督の黒沢清さんはFBIの新人と猟奇殺人犯で元精神科医のレクターの関係を描いた「羊たちの沈黙(1991)」を観て、猟奇殺人鬼のレクターが最初から収監されているシチュエーション、犯人を捕まえるまでのサスペンスではなく、捕まった後からがいよいよ怖くなる、という構造が斬新で、そこから発想して犯人を取り調べしているシーンをイヤ〜な感じに怖くできないものかと、色々と思案していくうちに本作の構想が浮かんだそうです、単なる怖いホラーでなく、おぞましさ、クリーピー(ゾッとする、不気味)なテイストがたまらないと・・。
確かに不気味な映画でしたね。
