劇場公開日 1997年12月27日

「【”心の闇を、霊術により救済する伝道師” ”こちらの世界”と”あの世”との狭間を描き続ける、黒沢清監督の名を国際的に高めたサイコ・サスペンス。】」CURE NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”心の闇を、霊術により救済する伝道師” ”こちらの世界”と”あの世”との狭間を描き続ける、黒沢清監督の名を国際的に高めたサイコ・サスペンス。】

2021年2月17日
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鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

■頻発する、”クロス”に首筋を切り裂かれた猟奇殺人が、短期間に3度発生する。
 実行犯は別人。

<Caution! 以下、内容に触れています。>

 ・猟奇殺人事件の捜査を進める高部刑事(役所広司)。

 ・友人の心理学者佐久間(うじきつよし)の協力を得ながら、”間宮”(荻原聖人)と言う記憶障害の青年に辿り着く・・。

 ・高部自身も、妻(中川杏奈:早逝されている・・)が、精神に病を抱えており、心に屈託を持っている・・。

 ・間宮と関わる人々(警官(でんでん)であったり、幸福な生活を営んでいた結婚していた男であったり・・、彼を診察した女医(洞口依子)が、彼の”無意識の催眠暗示”により、行った事・・。

 ・間宮の部屋を訪れた高部が目にした、膨大な精神病理学の書物。間宮は、精神医科大の生徒であった・・。
 ”メスナー”という18世紀のオーストリアの精神病理学者に入れ込んでいた間宮が、打ち込んでいた事。
 ”メスメリアン”

【間宮が、高部に言った言葉。 ”あんただけが、俺の言葉を理解できる・・。” 】

 ・佐久間が高部に見せた、1898年に撮影されたモノクロの、村川すずと言う、”息子を十文字に切り裂いた”母親の診療風景の映像。
 佐久間の
 ”当時は、診療とは呼ばずに、”霊術””オカルティズム”と呼んでいた・・”と言う言葉。

 ・その佐久間も、自ら命を絶つ・・。

<間宮を廃病院で拳銃で殺めた佐久間が、”晴れ晴れとした顔”で、行きつけのファミレスで食事をし、ウェイトレスに珈琲を頼み・・。
 そのウェイトレスが、無表情に手に持ったモノ・・。

 ”ごく普通の人々が、ごく普通に遭遇するであろう恐怖を描こうとした”と黒沢監督が語った、
 ”登場人物たちが放出する掴みどころのない恐怖に焦点を当てた”
 黒沢ワールドの萌芽を感じさせる、サイコサスペンスである。

 黒沢清監督のワールドワイドな、快進撃が始まった記念碑的作品でもある。>

NOBU