劇場公開日 1965年1月3日

「あぶ刑事と非情のライセンスの元ネタ?」顔役(1965) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あぶ刑事と非情のライセンスの元ネタ?

2020年4月17日
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東映ヤクザ映画が全盛期に向かおうとする1965年の公開作品
ヤクザ映画なのにほぼ全員洋装です
着流し姿は出て来ません
賭場や彫り物姿もありません
洋装でもチンピラ風体の登場人物は一人もいません
スーツ姿です
それもキチンとテーラーで誂えたと覚しき、良い生地と仕立てと形のスーツなのです
しかもちょうど良いサイズ感
ダボダボのペラペラのチンピラスーツとは全く違うものです
ドレスシャツも安物ではない生地、襟、袖
そこに控えめで上品なカフスを付けているのです

派手で下品な田舎くさいヤクザは誰一人いません
敵方の関西ヤクザが同じくスーツ姿ですが、野暮ったいスタイルにわざとされているだけです

冒頭は羽田空港です
そして首都高空港線を疾走する赤いオーブンカーに乗る仕立ての良いスーツとコート、高そうな帽子の高倉健と鶴田浩二の姿が続きます

代々木オリンピックプールの前に有るという設定の高級ホテルでの関東ヤクザの幹部会議も、畳の大広間に羽織袴の世界ではなく、洋室の大広間に映像によるプレゼンが行われるのです
プレゼンターは天知茂
そのスーツ姿のダンディーなこと!

鶴田浩二と高倉健はあぶない刑事のタカ&トシを思わせます
天知茂は非情のライセンスの主人公の会田刑事そのものてす

それぞれ21年後、8年後の人気テレビドラマです
その原形がここにあります

ヤクザ映画は丁髷の無い時代劇と揶揄されるパターン的な映画ですが、その初期にはこのような模索が行われていたのです

本作の脚本は仁義なき戦いを撮る笠原和夫と深作欣二の名前があります

音楽もジャズ調で古臭い演歌や歌謡曲は一切聞こえてこないのです

ヤクザ映画の革新の萌芽は既に初期から出発していたのではないでしょうか?

あき240