劇場公開日 1993年12月25日

「満男の就職活動」男はつらいよ 寅次郎の縁談 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5満男の就職活動

2019年11月17日
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鑑賞方法:DVD/BD

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シリーズ46作目。

就職活動中の満男。
大学入学も苦労したが、今回も。
30社以上も落ち続け、秋になっても決まらないでいた。
博の兄から紹介された会社の面接を受けるが、またしても…。
何もかも嫌になり、博と喧嘩して衝動的に家を飛び出してしまう…。

一週間が経ち、家出の大先輩・寅さんが帰ってくる。
家出の価値観を巡ってまたいつものように口論になっている所へ、満男から小包が。瀬戸内海の小島・琴島に居る事が判明。
さくらに頼まれ、寅さんは満男を迎えに行く事に。
どう説得する?…と問われた時の、「満男、おじさんの顔をよ~く見ろ。これが、一生就職出来なかった人間の成れの果てだ。お前もこうなりたいか?」という寅さんの台詞に座布団一枚!

その琴島で、
満男は漁をしたり、老人たちに代わって力仕事をしたり、生き生きと過ごしていた。若い看護婦の亜矢とは何やらいい雰囲気。
寅さんが到着。が、満男はこの島での暮らしに満足し、帰る事を拒む。
そんな時、満男が世話になっている家で療養中の葉子と出会い…。

話や設定や展開はこれまでのあるあるド定番。
若者の家出はあけみが家出した36作目『柴又より愛をこめて』風。
ユートピアのような小島。
寅さんと満男を迎え祝ってのどんちゃん騒ぎ。
寅さんと葉子、満男と亜矢、双方の恋。
恋の行方は言わずもながな。

就職活動に苦しむ満男の姿には同情してしまう。
何通も何通も履歴書を書き、何社も何社も面接で自己PRや志望動機など同じ事を言い繰り返す。
「テープレコーダーじゃねぇんだぞ、俺は!」
元々口下手で不器用であがり症の満男。
自分も就職には苦労したので、その時の事を思い出してしまった。
満男のように何社も何社も落ちてうんざりしていたのに、今の仕事はあっさりと決まった。不思議なもんだ。

松坂慶子は27作目『浪花の恋の寅次郎』以来2度目のマドンナ。寅さんと両想いの大人の恋を物語りつつ、仕事で行き詰まり、父の妾の子という苦労も滲ませる。
その父親役で、新国劇のベテラン・島田正吾。元外国航路の船長というモダンでハイカラな老人で、娘とタンゴを踊るシーンは白眉。中盤、妾の子でありながら本妻の子以上に自分を慕ってくる娘について寅さんと語るシーンはしみじみ。
満男が恋する看護婦である島の娘はチャーミングだが、どうしてもゴクミと比べると…。

SPゲストに注目!
笠智衆は亡くなったが、御前様はご健在という設定。その娘で第1作目のマドンナ・光本幸子が再々登場。
そして飛びっきりのSPゲストなのが、
くるまやに声を掛けてきたのは、同じ松竹の人気シリーズのあの釣りバカ男!
ワンシーンだけで寅さんとの絡みは無いが(おばちゃんとは話する)、夢のクロスオーバー!

島の雰囲気が本当に心地よい。
こんな島で少しでも過ごせたら、心癒され、また頑張ろうという気持ちにさせてくれる。

本作から寅さんが終始マフラーを巻いている事が多くなった。これには訳が。
この頃から渥美清の体調が悪化し始め、治療で首に注射をし、その注射跡を隠す為。
寅さんは病気一つした事無い健康児なので、首に注射跡など見せられない!…という渥美清の強い意思。

近大