劇場公開日 1983年8月6日

「柴又の恋人」男はつらいよ 旅と女と寅次郎 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5柴又の恋人

2019年8月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

幸せ

シリーズ31作目。

OPの夢は、
ある一揆の首謀者・柴又の寅吉が故郷の柴又村に帰って来る。妹の夫が岡っ引きと知り、両手を差し出す…。
舞台の時代劇で、客席から「大統領!」「日本一!」の掛け声。

序盤の騒動は、
明日は満男の学校の運動会。博が仕事で行けなくなり、ちょうど帰って来た寅さんが代わりに行って、パン食い競争で一等賞取ってやる!…と大張り切り。
嫌がる満男。それがきっかけで寅さんは不機嫌になり、いつもの大喧嘩。
結局、運動会当日は雨となり…。

旅先は、新潟。
ちょうどその頃新潟では、公演を行う予定だった人気演歌歌手の京はるみが急病。事務所の社長やマネージャーは対応に追われるが、実ははるみは失踪中…!
漁船で佐渡島に渡ろうとする寅さん。そこへ、サングラスを掛けた女が声を掛けてくる。
その女こそ、はるみであった…!

山田洋次が寅さんに置き換えた『ローマの休日』。
いや寧ろ、後の『ノッティングヒルの恋人』。
『ドラえもん』でもアイドルの星野すみれがドラえもんやのび太と出会う話があった。
誰でも、どんな作品でも一度は夢見た事ある、人気者との出会いや恋。その寅さん版。

人気演歌歌手・京はるみを演じるのは、実際に人気演歌歌手だった都はるみ。
この翌年に一旦の引退を発表。
都はるみのファンだった渥美清たっての願いでマドンナ役が実現したという。

人気者として華やかな世界で活躍していると思いきや、実生活は、仕事に追われ自分の人生に悩み、失恋もしたばかり。
そんな時出会った、面白くて可笑しい、懐深くて心優しい寅さん。
楽しいひと時を過ごす。
ついつい歌を口ずさむ。渥美清と都はるみのデュエットはよくよく考えたら、超貴重シーン!
相手が京はるみだと気付かない寅さんだったが、途中で気付くも知らぬフリをする。
社長やマネージャーが居場所を突き止め、別れの時…。

柴又に帰った寅さんは、京はるみと出会った事は秘密にするが、腑抜け状態。
家電屋から聞こえるはるみのカセットにフラフラとなり、遂にはウォークマンを持ち出してしまう始末…!

そんなある日、とらやを訪ねて来たのが、京はるみ!
いつものお馴染みの展開だが、相手が相手なので、今回ばかりはとらや…いや、柴又中大騒ぎ!
本当は寅さんに会いに来たのだが、詰め掛けたファンに応える気前の良さ。
急遽とらやの庭でリサイタル。
都はるみの歌唱シーンもたっぷり織り込み、歌謡映画としての醍醐味も充分。

人気者との出会いは、映画だから描ける憧れのシチュエーション。
でも実際は、人気者の方が寅さんと出会って癒される。
人気者の束の間の恋。

近大