いのちぼうにふろうのレビュー・感想・評価
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無名塾の『いのちぼうにふろう物語』を観て
能登演劇堂での公演を観る前に予習の意味で映画版を鑑賞。もちろん生の演劇に圧倒され、涙が止まらなかったのですが、劇が訴えてくる生きることの意味を痛感し、仲代達矢と故宮崎恭子の愛した脚本という意味もわかる。
舞台では安楽亭の親方を89才の仲代達矢が演じていたが、1971年の映画では中村翫右衛門が演じている。女嫌いで無法者の定七を仲代が演じている。両者とも迫力があり、後半に語られる母親のエピソードが富次郎の許嫁でもあったおきわに被って見えてくるのです。父親に吉原へ売り飛ばされるという不幸が目に見えるようでもあり、定七と与兵衛の男気が感じられる瞬間。命を賭してまでおきわを思う心が彼らに心の変化を与えたのだ。
公権力が強くなれば強くなるほど密輸業者が生まれてくる。いつの世も悪政に悩まされ、泣くことになるのは庶民だ。腕っ節が強い者がそうした無法者になる道理もわかるし、長いものに巻かれる八丁堀としても板挟みとなって無難に過ごそうとするものだ。
傷ついた雀もまた富次郎とおきわの姿を見ているようで、心が大きく動いた定七。自分の作った地蔵によって日にちを知るおみつの心も泣けてくる。クライマックスの描き方は舞台版が圧倒的だったため、つい映画の方の評価も下がってくるが、かなりリスペクトに富んでいるのも確かなこと。二人の未来に安堵するものの、恨めしくも感じられるおみつの気持ちにも心打たれてしまった。
尚、舞台では灘屋の手引きをするのがお京という女性で、定七に結婚を迫るというエピソードもいい改良点だったと思う・・・原作は知らないけど。
十三夜
そうそうたるメンバーが出演していて、楽しめた
仲代達矢が定七という 一番尖っていてキレそうな中心人物を演じている
獣のように勘も鋭い
遊び人風の与兵衛を演じた佐藤慶が 何となく色っぽかった
彼等が安楽亭で暫し和み その閉塞空間でのモチベーションが小雀や富次郎を助けることになってゆく処も面白かった
巨悪を知ってしまった自分達には未来がないかも…と薄々思っているような処も
同心金子(神山繁)が〈とかげのシッポ切り〉で済ませようと〈多勢に無勢な戦い〉を仕掛け
最後に前面にしゃしゃり出て来る処にも慢心が見える
安楽亭の造作(美術)や 葦原と水の風景
十三夜に底辺を思わせる船着き場から ゆっくり漕ぎだしてゆく舟と彼等の立ち向かうような姿、そしていちめんの薄(すすき)が美しかった
武満徹の音楽もよかったです
日本人の美意識のようなものも感じられました
窮鳥懐に入れば、我ら命を賭して・・(人情渡世)
山本周五郎の「深川安楽亭」を社会派の巨匠小林正樹監督が映像化、町役人も入るのを躊躇する吹溜りの「島」に、いわくの有る若い「つがい」が身を寄せてきた・・
ご禁制の抜荷稼ぎを生業とする住人達は、この窮鳥に自分達にはない「将来への夢」を託して「御上の罠」疑惑のある抜荷船へと静かに漕ぎ出した・・
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最終場面、愛人(無頼漢)を失ってしまった一膳飯屋の娘(栗原小巻)のやるせなささに貰泣き・・
★なぜこの時代劇の名作がDVD化されないのか、残念で仕方が無い・・
(同監督の「闇の歯車」が、情感的には似ていて、こちらはDVD化済)
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