劇場公開日 1952年10月9日

「夏の夕立の稲妻は直ぐに収まるのです」稲妻(1952) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0夏の夕立の稲妻は直ぐに収まるのです

2019年10月17日
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鑑賞方法:DVD/BD

庶民派の成瀬監督作品らしく、
下町の母と長男と三人姉妹の物語は下世話な世界です
その兄妹は全部父親が違う家庭という具合
高峰秀子は一番下の妹清子を演じます
彼女は家族全員どころか、一家に関わる男も女もみんな駄目駄目な連中だと嫌っています
まだ若い清子はこんな駄目連中と一緒に居たら自分まで駄目になると世田谷に下宿を借りて逃げ出します

とはいえ彼女だってお供えのブドウを行儀悪く食べて食べた皮と種を庭に放り投げるのです
地金はこの母にしてこの娘なのです

世田谷の下宿の大家の未亡人や隣家のピアノを弾く兄妹はまるで小津安二郎作品の登場人物のような衣装と上品な言葉遣いと物腰なのが面白いです
わざとや狙ってやってる風に思えます

稲妻は最後に光ります

なんでみんな駄目な人ばかりなのか
それはお母ちゃんがズルズルベッタリでだらしないから、そうなるのよ!と言い放ちます
私、産まれてこなければ良かった!とまで言います
きつい言葉で言いあって二人は泣きだまします

その時隣の家からピアノの音が流れて来ます
その時自分だってこの言動は隣家の兄妹とは大違いの所詮この母の娘だと気がつくのです

夏の夕立の稲妻です
直ぐに収まります
二人はケロリと泣き止みます

清子は浦辺粂子の演じる母を駅まで送ります
二人は夜道を歩きます
父が母に買って与えたルビーの指輪は本物だったと娘は母にいいます
母はお前のの父親は誠実な男だったと応えます
二人の歩く夜道は未舗装の道ながら、雨降って地固まったようです

下町の一家の家のある商店街はまるで三丁目の夕陽の街角です
参考にしたひとつかも知れません

高峰秀子28歳美しいです
しかし浦辺粂子の凄さがみんな持って行ってます
凄い女優です
この人のポジションは現代は誰が引き継いでいるでしょうか?
樹木希林さんだったかも知れません
しかしその次は?
残念なことに思い当たらないのです

あき240