劇場公開日 1983年11月12日

「いい男といい女と熱い酒と」居酒屋兆治 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0いい男といい女と熱い酒と

2017年5月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

萌える

函館にある小さな居酒屋“兆治”。
無口だが真面目な英治と妻が切り盛りするこの店には、毎夜毎夜常連客で賑わう。
ある日、近くの牧場で火事が。
火事の中、悲観に暮れる牧場主の妻・さよを見て、英治は複雑な思いに駆られる。
かつて英治とさよは恋人であった。

貧しかった英治はさよの為を思い、身を引いた。
さよは金持ちだが愛してもない男と結婚、ずっと英治の事を忘れられずにいる。
さよには放火の疑いが…。

監督・降旗康男×撮影・木村大作×主演・高倉健の名トリオによる情感たっぷりの人間ドラマ。
寡黙で不器用で、横暴な先輩にただただ頭を下げ、理不尽に殴られても堪え忍ぶ英治は高倉健のイメージそのもの。
何かと気にかけてくれる旧友・田中邦衛、先輩・伊丹十三、小松政夫や池部良ら店に集う豪華な常連客の人間模様も乙な味。
中でも一際…いや、本作最大の魅力を放っているのは、やはり大原麗子だろう。

正直、彼女が演じるさよは面倒臭い女だ。
昔の男に未練たらたら。
今の夫から逃げ出そうとする事しばしば。(決して暴力を振るうとか悪い夫ではない)
悲しみを売りに、薄幸の女を演じているかのよう。
言い寄る男を虜にする。
今なら間違いなく女が嫌いな女だろう。
でも、その儚げなさが堪らなく色っぽいのだ。
男ならイチコロになってしまうのも無理はない。
儚げないい女には不幸が似合うとは言わないが、大原麗子が死去した際の状況を思うと、妙なシンクロさにドキリとする。

結ばれなかった男と女。
その行く末に、熱い酒で思いに耽りたくなる。

近大