劇場公開日 1964年7月4日

「篠田正浩の最高傑作」暗殺(1964) hjktkujさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0篠田正浩の最高傑作

2022年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

傑作である。ポスターはカラーだが白黒作品である。白黒作品だからミステリアス感がよく出ている。脚本が「戦争と人間」、「栄光への5000キロ」、「内海の輪」の山田信夫だが、この人は駄作も多いが、この作品は橋本忍脚本の「切腹」を彷彿とさせるタッチで最後まで飽きさせない。篠田正浩33歳のときに撮ったものなので、溌溂とした作品に仕上がっている。1964年公開だが、58年後の2022年に見ても実に面白い作品である。良い作品は古くならないどころか熟成するものらしい。黒澤明監督の「七人の侍」、工藤栄一監督の「十三人の刺客」や「大殺陣」も何度見ても飽きないのと同じだ。さて、内容は、新選組はこの男が居なかったら決して生まれることはなかった清河八郎の、浪士組結成から暗殺されるまでを、関係者の思い出話で構成したものである。司馬遼太郎原作なので半分は嘘八百ではあろうが、「羅生門」の語り口スタイルで、愛人、徳川幕府要人、門弟、坂本龍馬らの証言から、清河八郎像を追っていく。暗殺実行者の佐々木只三郎は、門弟の面前で清河八郎に二度も打ちのめされ恥をかかされ憑かれたように清河八郎を殺したいと思うようになる。この殺害動機を幕府要人が利用して清河八郎は暗殺され映画は終わる。清河八郎という人物は、すべての「新選組」物語で、幕府を裏切ったいい加減な人物という地位が確立しており、映画演劇でその実像が語られることは稀なのであるが、この不人気者をこの映画は真正面から取り上げており実に興味深い。丹波哲郎、岡田英次、早川保、岩下志麻、木村功、佐田啓二、そして後年演出家として名を成す蜷川幸雄らが生き生きと動き回っていて楽しい。篠田正浩の最高傑作であろう。

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hjktkuj