劇場公開日 1969年10月10日

「寺田農が生き生きしている」赤毛 hjktkujさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0寺田農が生き生きしている

2022年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

三船敏郎が見たくて、「七人の侍」、「待ち伏せ」に引き続きこの「赤毛」を見た。岡本喜八のいつものコメディタッチ満載の作品で、18歳の公開当時は面白く感じたが、52年経過して再見すると、大して感動はない。岡本喜八といえば「日本のいちばん長い日」のドキュメンタリータッチのほうが好みなので、「赤毛」のようないつもの演出は好きになれない。物語は、薩長土の「官軍」(実は岩倉具視や薩長のチンピラ郷士どもが結託して勝手に名乗ったもので、実体は賊軍中の賊軍なのだが)が、江戸に進軍するに際して、抵抗勢力の抵抗を削いで進軍しやすくするために、赤報隊を使って、「官軍」の行く先々でデマ政策を宣伝させ、挙句の果てに、赤報隊を偽官軍として殺し、赤報隊が宣伝した政策はデマであるとして官軍の政策をご破算にしたという史実を基にしたものである。この手の、いわゆる「官軍」の空手形はこれだけではなく、高杉晋作は、新政府は四民平等と約束してエタ・ヒニンを奇兵隊に募集したり、東海道で清水次郎長と抗争を繰り返していた黒駒勝蔵一家を新政府は今までの罪を不問として「官軍」に味方させ、役割終了後、赤報隊同様抹殺している。実に興味深い史実なので、コメディタッチではなく、橋本忍あたりに脚本を書かせて、「日本のいちばん長い日」のようなドキュメンタリータッチで描いたらもっと面白く歴史に残る映画となったのではないか。三船敏郎は、「七人の侍」の菊千代様の生まれ変わりにしか見えない。どうせなら、高橋悦治を「七人の侍」の官兵衛役に設定し直し、違ったストーリー、例えば、騙されたことを知った赤報隊・忠義の侍・農民連合軍と「官軍」との戦いをリアルに描いたら違った面白い作品ができたのではないだろうか。晩年は悪役に徹した寺田農が、やくざにしては博学の生き生きした若者として動き回っているのが見られたのは収穫である。

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hjktkuj