劇場公開日 2009年6月6日

アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン : インタビュー

2009年6月12日更新

「パール・ハーバー」「ブラックホーク・ダウン」「ブラック・ダリア」といった大作から、本作のような実験的な作品まで、多彩なキャリアを作り上げているジョシュ・ハートネット。人探しをしながら、自らの内面と向き合うという難役に挑んだ本作について話を聞いた。(取材・文:編集部)

ジョシュ・ハートネット インタビュー
「こういう映画の方が僕は好きだし、作っていても楽しくてしょうがないんだ」

香港のアパートで自らの内側にある悪魔と向き合うクライン(ジョシュ・ハートネット)
香港のアパートで自らの内側にある悪魔と向き合うクライン(ジョシュ・ハートネット)

——今回あなたが演じたクラインは、ある種の罪の意識を持っているキャラクターでした。ユン監督との役作りは?

「ここ何年かで、自分の役作りに対してのアプローチが変わってきた。今回のユン監督の場合は、とにかく現場でどんどん変えていくタイプだったので、どんなことがあってもクラインというキャラクターから離れないように気をつけた。去年、自分のプロデュース作では、リサーチをして役を作り込むことができたけど、クラインというキャラクターは、そこらを歩いているような普通の人間ではないので、リサーチのしようがなかった。だから、想像力を駆使してキャラクターを作っていったんだ。でも、基本的に監督の映画作りへのアプローチによって役作りも変わると思う」

5年ぶり4度目の来日。 ジョシュ・ハートネット
5年ぶり4度目の来日。 ジョシュ・ハートネット

——本作には、あなたが演じた探偵クライン、シタオ(木村)、そしてマフィアのス・ドンポ(ビョンホン)という、それぞれに問題を抱えたキャラクターが登場しますが、あなた自身による3人のキャラクターについての考察は?

「僕が演じたクラインは、“狂気”の人なんだけど、それだけではない。彼は探している人物、つまりシタオに強く共感し過ぎて、同化してしまうんだ。それは彼の欠点であり、自らを痛めつける原因になってしまうけど、そうせずにはいられないんだ。ユン監督は、この映画をとても宗教的にとらえていて、舞台をこの地球上に存在する地獄として描いている。そしてクラインは、そこで苦しんでいる“堕天使”なんだ。イ・ビョンホン演じるドンポはまさにこの世の悪を体現しているキャラクターだ。怒れる男で、冷血に人を殺すが、一つだけ“ある女性を愛し過ぎる”という弱点があり、彼のその女性への執着心はまさに人間が持つ欲望を象徴している。そして、シタオは、そのものずばりイエス・キリスト、つまりは救世主を体現しているんだ。でも、これはあくまで僕の解釈であって、簡単に分類できないと思う。ストーリーもキャラクターも観客に解釈を委ねるほかないね」

——ハリウッドの撮影とは大きく異なる現場だったと思いますが、この映画の現場を通して学んだことは?

「自分でコントロールできない状況下にあっても、何とかやっていくことを覚えたよ。本来、自分自身が仕事をする際は、コントロールされた環境が好きなんだけど、今回は撮影の予定などが毎日変わる混沌とした現場だったので、そういった考えは捨てるしかなかったんだ」

——俳優として参加するときに、最も大事にしているものは? 作品に出演する基準となるものは?

ショーン・ユー(左)とジョシュ。 劇中では刑事時代の親友
ショーン・ユー(左)とジョシュ。 劇中では刑事時代の親友

「やはり監督が誰かということだね。今回は脚本を読む前に出演を決めたよ。ユン監督の過去の3作を見て、ユニークで独特な“声”を持っているひとだと思っていたからね。ハリウッドで仕事をしていると、色んな監督と仕事をするチャンスがあるんだけど、ヒーローのような役柄ではなく、今回のような実験的な映画のほうに興味を持ってしまうんだよ。でも、最初に脚本を読んだときには、クラインは45歳という設定で、当時27歳の僕は雇われないと思っていたんだ。そして、初めて監督と会って5分くらい話をしたときは、彼はただ、ニヤニヤ笑っているだけでほとんど喋らなかった。すると、そのミーティングが終わって車に戻るまでにエージェントから“君に決まった”って電話があったんだ」

——実験的な映画に出演することが多いので、ハリウッドでの商業的に成功した作品からは遠ざかっているように思いますが、エージェントからなにか言われませんか?

「もうすでに、2〜3人をクビにしているんだ(笑)。こういったアート系の作品が、僕の行くべき方向なんだけど、これ以上好き勝手にやっているとみんなに忘れ去られてしまうので(笑)、もう少しバランスをとってキャリアを作っていきたいね。でもこういう映画の方が僕は好きだし、作っていても楽しくてしょうがないんだ」

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