劇場公開日 2007年8月4日

水になった村のレビュー・感想・評価

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5.0何度観ても静かな感動と現代社会に生きる私たちへの課題が見えてきます。

2023年2月20日
スマートフォンから投稿

泣ける

笑える

幸せ

ダムに沈む村に最後まで住み続けたジジババたちの暮らしを丁寧に撮ったドキュメンタリー映画。
現代の私たちには不便と感じるような徳山村の生活。しかしながら、スクリーンに映るジジババたちの表情はいつも明るく、笑い声が絶えない。
目には見えないけれど山の神、川の神、風の神の存在を感じずにはいられないほど、ジジババたちの生活には豊かさがあり、自然の恵みに溢れていて、人間も自然の一部なんだと、思わず地球人としての「人間」を考えてしまう。

この村に先祖代々住んできたジジババたちがその土地から退かなければならなかった理由は、徳山ダムの建設だ。

治水のため、エネルギーのため、、、いろんな理由は、この村で住む人たちからは、かなり遠く離れた事柄で、矛盾しているが私自身もその恩恵に授かりながらモヤモヤした思いが払拭出来ない。なぜこの人たちを犠牲にしなければならないのか。。。

この映画は全編通して、徳山村の豊かさ、そこに住む人々の豊かさだけを描いているが、観終わった後のモヤモヤは一人一人に宿題を与えられたようだ。
若かりし頃の大西暢夫監督の観るもの全てが新鮮に映る感じや、徳山村やそこに住むジジババたちが大好きで東京からオフロードバイクで片道約10時間かかって10年以上通い詰めることになった原動力となるものが、スクリーン越しに垣間見えます。

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ツナマヨ

4.0最後の遊園地

2019年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

“ほのぼのした、ジジババの物語”といった印象で、映画を見終えた。
悲壮感はなく、「ここはダム建設が、円満に進んだのだな」と思った・・・。

ところが、その後、ネットで「徳山ダム」を調べてびっくりした。
すんなりと移転が決まったとは、およそ言えないダムだからだ。
しかし、本作品では、ダム闘争は一切描かれない。ニュースの音声を通じて、示唆されるのみだ。
約10人の老人が出てくるが、彼らの中には、その当時、当局と激しくやり合った人もいるはずだ。
家がとり壊される時の、お婆さん達の悲痛な表情の意味を、後から理解した。
と同時に、失われる「山村の生活」の最後の瞬間だけを映し取ろうという、作り手の“ピュア”な立ち位置が分かったのである。

“サステイナブル”に山村を利用し尽くす、老人たちの知識と行動力には、終始、驚かされっぱなしであった。
漢方薬用のキハダの皮を除けば、ほとんどが食物に関する話だった。
ワサビやトチの実や山イモなどを採取し、小魚やヘビを捕まえる。
“食べ物はスーパーで買うもの”という自分が、ホントに馬鹿に思えてくる。
これらの実践的な知識は、一朝一夕ではつくまいから、老人たちと共に消えゆくのだろう。

「タコの糸が切れたように」、気ままに山野を歩き回って過ごす幸せ。
老人たちにとって、もはや、この廃村は“遊園地”なのであろう。
生まれ故郷だから、ではない。19歳でここに来たという徳田のお婆さんにとってさえ、かけがえのない“故郷”になっているのだ。
15年間にわたる、素晴らしい記録だ。

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Imperator

4.5衝撃だった

2019年9月29日
iPhoneアプリから投稿

岐阜県民として、腐敗した行政の圧力によって強行された徳山ダムは、長良川河口堰に並ぶ屈辱。
映画では、そうした感情的な描写がひとつもない。
ただ淡々と、そこに暮らすおじいおばあの質素で美しい、自然と共生した縄文さながらの豊かな暮らしが映し出される。
それだから余計に、水になっていく村を見るのが辛いし、運命的なものとあきらめて受け入れざるを得ない、力強い人間の生き様を見せてもらい、悲しいだけではない物語として、生きる知恵や勇気をもらいました。

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fuhgetsu