街のあかり
劇場公開日 2007年7月7日
解説
フィンランドの名匠アキ・カウリスマキによる“敗者3部作”の最終章となる人間ドラマ。ヘルシンキの街の片隅で生きる孤独な男が、人を愛することによって人間性を回復していくさまを描き出す。恋人も友人もいない夜警員コイスティネンは、カフェで声を掛けてきた美しい女ミルヤに恋をする。しかし彼女はマフィアが送り込んだ情婦だった。強盗の罪を擦りつけられたコイスティネンは逮捕され、1年間の服役を言い渡されてしまう。
2006年製作/78分/フィンランド
原題:Laitakaupungin valot
配給:ユーロスペース
スタッフ・キャスト
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人が良い割に周りと上手くやって行けない不器用さ、それだけに周りにいる人の少しの優しさが滲みますね。
もっと賢く生きればいいのにできずに転がり落ちてく様が淡々としつつ暗くなり過ぎずにクスッと笑えるテンポで進んでいく事事態に監督の力量を感じます。
自分をよく見せようとしている時は器の小さな人間に見えるのに、等身大の時はそれなりにカッコよく見えて不思議でした。強ぶらない方が根の優しい性分が見えて良い。獄中で一度だけ見せた楽しそうな笑顔が何でもないシーンの様でいて胸に刺さりました。
何故こんなにも、転落していくストーリーが悲しい気持ちに落とされずに見れるのか。つい考えてしまいました。これは怒りの感情が映画の中にほとんど無いからかもしれない。加えて完全なあきらめもまだない。
何となくあきらめないし今より良く生活していく事はできるだろうというゆるい希望。高くを見すぎる必要は無いんだっていう社会の大多数の人を肯定する温かさを感じます。
負け犬3部作!良いじゃない!!浮き雲も見なきゃね!
2020年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
監督自ら“敗者三部作”と銘打っているこの作品。警備会社で夜警をしている主人公コイスティネンは仕事をそつなくこなすが、同僚からは嫌われ、家族も恋人もいない、孤立した人生を歩んでいるのです。本人は「警備会社勤務のままじゃ終わらない」と、夢は大きく独立心旺盛なのだけど、どうもうまくいかない。警備会社も3年目だというし、職場の人間関係が原因で転職を重ねているのだと想像できる。
失業だとか転職だとか、人生の落伍者というキーワードは他人事ではないのですが、コイスティネンのように真面目な不器用さを見せつけられると、ついエールを送りたくなってきます。なにしろ、夜明けのカフェで声をかけてくる謎の女ミルヤに誘われるままデートする、なんてシチュエーションはやばいでしょ・・・孤独さゆえに人を見る目がないというか、純粋すぎるというか。それに加えて、ソーセージ屋の女性アイラの気持ちにも気づかないという鈍感さも憎めないところ。
やがて宝石強盗の幇助罪として実刑を受けることになるのですが、いつの間にかミルヤのことを信じて、警察や裁判所でも彼女の名を出さなかった。そこに男らしさも感じられるものの、彼女に対する執着心もなさそうだったし、罪を全て一人で被ってしまうほどの神のような存在だったのかもしれません。だけど、時折キレてしまい、暴力的な一面を見せるところは人間臭さも感じてしまいました・・・
一見すると冷たさも感じられる町並み、それに刑務所の壁の映像。カウリスマキの映像にはこの敗者の心情をそのまま建物に投影したかのようなものを感じます。そして、刑務所内で初めて笑顔を見せる主人公や、ほのかな希望を感じさせるラストシーンには全体に比べると際立つほど印象的。それに暴力シーンを直接見せない手法そのものにも作り手の優しさを感じさせる作品でした。
【2007年8月映画館にて】
2015年4月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
コミュニケーションがうまくとれず、孤独な男が、マフィアに騙され堕ちていく。一切抵抗もせず、黙って現実を受け止める姿勢が悲しい。
まずは一言、愛すべき映画です。
主人公、どこか人間不信ぶってるが、簡単に人を信じちゃう。前向きな言葉をいつも言ってるが、表情は全然前向きじゃない。おつむがなければ、学もない。そんな彼は、それでも一つ覚えのように前向きな言葉を言い続ける。沈みそうな人生なのに、そんな言葉がライフジャケットになってぷかぷか浮かんでる。
ほんと萌えてきます。
カウリスマキは作品に一切の説明ほどこさず、展開で観客を納得させるタイプの監督。はっきりいって天才です。
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