劇場公開日 2006年11月3日

「“差別”と共に、生きていくということ。」手紙 mori2さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“差別”と共に、生きていくということ。

2008年9月18日

泣ける

悲しい

難しい

犯罪被害者の側を描いた映画は、過去にもあったと思われますが、犯罪加害者の側を描いたモノは、あまり例がないんじゃないでしょうか。テーマがテーマだけに、観ていてとても重かったです。昨今の“泣ける映画”とは同じ括りに出来ない映画です。

 前述しましたが、テーマがテーマですので本当に最初から重苦しいです。観ていてドンドン胸が締め付けられ、段々苦しくなってきました。そのくらい“差別による不幸の連鎖”が『これでもか!』と云わんばかりに続くのです。『かわいそう』などという一言では、到底済まされないような。しかしこの映画は“差別”を悪いことと認めながらも、『“差別”は決してこの世から無くならない。差別される側は、そのことも抱えて、生き抜いていかなければならない』と訴えているのです。吾輩、この考え方には目からウロコが落ちました。軽い気持ちで『差別反対』などと言うよりも、何倍も現実的で重みがある考えだと思いました。

 玉山鉄二・山田孝之は、それぞれ熱演です(ただ山田君のお笑い芸人は、悲しいほど面白くなかったですが…爆)。そしてこの映画にも登場“カメレオン女優(笑)”沢尻エリカ!この秋、一体何回彼女をスクリーンで観たことでしょう。この映画でも、その芸達者ぶりをイカンなく発揮してくれています。しかし、普段の彼女とのギャップが彼女の女優としての評判を良くしているように思えるのは、吾輩だけでしょうか?

 感動的なラストに、小田和正の「言葉にできない」が流れます。このまま終われば素晴しかったのですが、何故かエンドロール中に、もう1曲歌が流れます。個人的な感想ですが…『この歌、要らない!』…。

 しかし、この手の“人権”“差別”をテーマに扱かってるような映画は、一昔前なら学校を巡回して上映されてたと思うのですが、今や全国一斉ロードショー扱いですよ。いくら原作が人気作家・東野圭吾氏の作品とは云え。この事柄一つ取ってみても、今の日本映画の勢いを感じさせられますね。

mori2