劇場公開日 1974年7月14日

「淡い初恋物語を描くジョージ・ロイ・ヒル監督の優しさと、確かな映画技巧」リトル・ロマンス Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0淡い初恋物語を描くジョージ・ロイ・ヒル監督の優しさと、確かな映画技巧

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

何てカワイイ映画なんだろう。
ジョージ・ロイ・ヒル監督の優しい映像タッチが、全編を生命感溢れる瑞々しさで覆いつくしている。客観的に視れば、大人げない作り話で童話のような美化された青春ラブストーリーかも知れないが、ここには人として大切にしたい価値観に染められた本質的な人間性を謳うドラマの芯が、確かにある。それ故、映画好きで楽観的な映画作りの遊び心が、素直に許せるのである。今年一番に、映画と共に時を過ごせた楽しいひと時であった。
これは全て、ジョージ・ロイ・ヒルというアメリカ映画監督の才覚である。昔のハリウッド映画には、夢みたいなお話を説得力を持って最後まで見せてくれる映画人がいた。アメリカンスピリット、アメリカンドリーム、アメリカンヒューマニズムといったある種のプロパガンダでありながら、善意の勝利の讃歌に観客は魅了されたのだ。例えば、「オペラハット」などのフランク・キャプラが代表であろう。それで今日の映像文化がどうかと云うと、リアリティと共感の追求が映画表現の主流になり、夢は夢に過ぎないとなった。そんな時代の変化の中で、現実と夢の両面をバランスよく融和させ、映画の面白さ、楽しさを与えてくれたこの作品を、高く評価しないではいられない。それはまた、フランスのパリからイタリアのヴェニスまでのヨーロッパ文化を舞台にしたことが大いに助けているのではないかと思う。パリに住む13歳の少年と13歳のアメリカ少女の純粋な初恋物語としては、恵まれた背景である。
冒頭の少年の日常生活のスケッチ描写のリアリティがいい。ロイ・ヒル監督の演出の切れ味が冴える。アーサー・バロンの「ジェレミー」に並ぶドキュメンタリータッチの写実性が、まず物語の基調を整える。それから、アメリカ人映画監督の自堕落ぶりを皮肉ったり、少年少女の性意識を大人の視点で理解できるところで納得させるエピソードに、ロイ・ヒル監督のユニークな道徳観念が垣間見える。唯一の欠点は、ローレンス・オリビエ演じるスリの紳士と少年少女の絡みが描き切れていないところだけだ。映画としての自然な流れが不足と見た。しかし、それを補って余りあるラストの盛り上げ方の見事さは、何と言っていいか分らない。活動写真からの追う追われる典型的な映画らしいスタイルが生かされて、別れのラストシーンの余韻がいつまでもこころに残り、忘れられないでいる。   1979年10月9日 銀座文化2

ジョージ・ロイ・ヒル監督の初期の「マリアンの友だち」を連想させる児童映画の秀作。ダイアン・レインが本当に可愛かった。映画作りのこころを持った優しくて誠実な、それでいて強かさも兼ね備えたロイ・ヒル監督の様な映画人は、今は居なくなりました。

Gustav