劇場公開日 1987年3月

「【”アメリカ、ベトナム戦争史を黒く塗れ!”前半パートの激烈な新兵訓練シーンと、後半パートの実戦の非情さを鮮烈に描いた作品。この作品以降の米戦争作品からヒロイズムを払拭した記念碑的作品。】」フルメタル・ジャケット NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”アメリカ、ベトナム戦争史を黒く塗れ!”前半パートの激烈な新兵訓練シーンと、後半パートの実戦の非情さを鮮烈に描いた作品。この作品以降の米戦争作品からヒロイズムを払拭した記念碑的作品。】

2021年1月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館、VOD

怖い

興奮

知的

■今作が発表されるまでは、メジャー作品ではここまでベトナム戦争の実情について、リアルな描写で描いた作品は稀有であった。
 そして、この作品をきっかけに「プライベートライアン」を代表とした、”戦争を美化しない”作品が続々と製作された。

 内容は、映画好きであれば(映画好きでなくても)知っていると思われるので個人的感想のみ記す。

◆前半シーン
 ・新兵ジョーカー(マシュー・モディーン)と”太っちょ微笑みデブ”レナード(ヴィンセント・ドノフリオ)達が、ハートマン鬼軍曹にFワード満載の中、しごかれるシーンの数々。

 海兵隊ってここまで、やるの!と戦慄したシーンが、延々と繰り広げられる。

 ”太っちょ微笑みデブ”の微笑みが、優しい目付きから、明らかに精神に異常を来した微笑みに移行していくショット。

 怖い、怖すぎる。

 - 今作を初めて観た際には、ヴィンセント・ドノフリオの名前も知らなかったが、その後の彼の活躍する姿を見ると、何故か”頑張ったな、微笑みデブ・・”と、脳内で呟く自分がいる。
 〇学生時に観て、もし自分が将来、人に教える立場になったら、”ハートマンのようには絶対にならないぞ!”と思った。

 そして、今作鑑賞後の数年後、まさかの技能系新入社員教育を全面的に任された時、この映画を思い出したなあ・・。(それまでは、軍隊の様な旧弊教育をしていたのである・・)-

◆後半シーン
 ・前半シーンのインパクトが強いので、多くの人は見逃しがちであるが、この後半シーンのリアリティ溢れる”静かな”戦闘シーンが、今作後の数々の米戦争映画に与えた意義は、実に大きいのである。
 「プライベートライアン」「アメリカスナイパー」etc.etc.・・。

<常に進化し続けた、スタンリー・キューブリックがベトナム戦争をリアルに描き出した作品。
 かの御大に、反戦映画を製作している意識は無かったのでは…、と私は思っているが、今作以降の米戦争映画の内容に多大なる影響 ーヒロイズム除去ー を与えた映画であると、私は思っている。
 エンディングで流れる”Paint It,Black"を聴くと、矢張り、反戦のメッセージなのかなあ・・と思う映画でもある。>

NOBU
marさんのコメント
2021年6月7日

”反戦”という思想すら、割と最近できた常識だったことに気づきました。
そう考えると前半パートの長さ・バカバカしさも皮肉に思えてきて…。
コメントありがとうございました。

mar