劇場公開日 1957年8月15日

「オードリー『昼下がりの情事』~アリアーヌ巻き」昼下りの情事 細谷久行さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5オードリー『昼下がりの情事』~アリアーヌ巻き

2014年4月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

BSシネマで観る。私立探偵(モーリス・シュヴァリエ)の一人娘、清純無垢な乙女アリアーヌ(オードリー・ヘプバーン)は父親の捜査資料を盗み読みするうちこともあろうに大金持ちの実業家で父親ほど年上のプレーボーイに強い関心を抱く。なんとか近づきになれたらと願う。ふとした機会に機転をきかせフラナガン(ゲーリー・クーパー)の浮気現場の窮地から彼を救い近づきになる。アリアーヌにはミシェルというボーイフレンドはいるが頼りなさに飽き飽き。こういうことは今の日本にもみられるのではないだろうか。同世代の男たちには飽きたらず親子ほど年上の男性にしか惹かれないという風潮が。

アリアーヌはフラナガンのプレーボーイぶりに内心ヤキモキしながらも背伸びして男性経験豊富なプレーガールを演出して彼の気を引こうとする。こういうことは、あまり好きでもない男とその仲のよさを見せ付けて本命の男性の嫉妬を煽り注意を自分に振り向かせようという切ないまでの女心に通ずるものがあるのではないだろうか。

やがてフラナガンもアリアーヌの新鮮な可憐さに魅かれてゆく。ここでアリアーヌは背水の陣を敷く。彼のビジネス用レコーダーに居もしない男たちの架空の職業や名前を立て続けに録音していっていかに男たちにモテ男性経験が豊かであるかということを知らしめようとする。

録音を聞いたフラナガンの嫉妬は爆発しこともあろうにアリアーヌの父親に彼女の素行調査を依頼する。そして総てが明らかになる。フラナガンは父親の意を汲んでパリを後にする決意をする。

何も知らないアリアーヌはリオン駅まで彼に付き従い別れに涙する。列車はすべるように走り出す。キリリとスカーフを巻いたアリアーヌは架空の男たちの名を叫びながら追いすがる。

このラストシーンはこの映画のクライマックスでありオードリーの魅力と演技が極まる。なんといじらしく一途な事か。久しぶりに映画の醍醐味を味わった。

細谷久行