劇場公開日 1957年9月17日

「どん底に表れた仏陀」どん底 えらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5どん底に表れた仏陀

2014年10月28日
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悲しい

怖い

マジどん底。観終わったあとそう呟きたくなる。なんとかして得た金はすぐ酒かバクチで溶かす、金がなければ寝るか人にたかる、真面目に働く人をバカにして足を引っ張る。そんな男が数人。昔の(多分美化された)思い出にすがるヒス女。どん底だ。

仏陀はその昔、悩める人々が自発的に悟りに至れるようなアドバイスを人それぞれ違った形で行っていた。しかも彼は一義的な教えを書にまとめることもなく死去したので、彼の教えの解釈は分かれ、宗派は分裂していった。

長屋に表れた一人の老人はさながら仏陀そのものであった。黒澤なりにゴーリキーの戯曲を日本でアレンジした結果なのだろうけど、左卜全演じる彼は見ている僕を励ましてくれているようだった。少し大袈裟かもしれないけど、長屋がこの世界の縮図としたら、彼はそんなどん底の世界で信じたい綺麗事そのものなのだ。

そして彼が去った後の長屋の様は悲惨極まりなく、でもこれでよかったのかもなとも思える。暗い話のはずなのに不思議な諦念というか、そんなものがありました。

えら