劇場公開日 1957年9月17日

「救いのない諦めの中の退廃」どん底 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5救いのない諦めの中の退廃

2013年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合:50点
ストーリー: 75
キャスト: 75
演出: 75
ビジュアル: 55
音楽: 60

 江戸時代の庶民の生活とは現在とはあまりにかけ離れている。ましてその時代の貧困層ともなれば普通の幸せなんてどこを探してもなくて、人々はそれぞれのやり方で浮世を忘れる。売春婦は嘘と夢想の中に自分の幸せを求め、あるものは酒に逃げ、あるものは安っぽい賭博に夢中。これだけ光のさすことのない生活の中でも、人々はかろうじて自分のすがるものを見つけて現実を忘れながら生きていく。それでこの小さな社会に狂気を帯びながらも妙な均衡が出来ている。

 しかしきつい作品である。登場人物は個性的だし映画として文学的価値があるとも思うのだが、もう見たいとは思わない。もし自分がこの時代の彼らの立場に生まれ、彼らの人生を自分に置き換えたらと思うと本当に恐ろしい。外国のスラム街を歩いたときに見た、どうにもならない絶望や諦めの中に生活する路上生活者の人々や貧困層の人々を思いだす。自分は安定した社会の上にいてそこから彼らを覗いているだけという、他人事の立場でこの映画を見れない。見ていてかなり辛いだけだった。経済的不況の続く現代日本にもこのような社会が少しずつまた増えているように感じる。

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Cape God