劇場公開日 2008年3月1日

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「倫理学的見地からも、戦争責任の見地からも考えさせられる映画」明日への遺言 まゆまゆさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0倫理学的見地からも、戦争責任の見地からも考えさせられる映画

2008年3月25日

泣ける

知的

岡田中将は確かに正しい!!っていうのがまず第一の感想。
アメリカの検事が、まったく持っていやな奴な雰囲気満載なのですが、岡田中将はひるまずに言うことはちゃんと言うって感じで、男らしい。
日本男児とは、今でもこうあってほしいものです。
「法戦」と彼が呼んだとおり、法廷で真の戦争問題が暴かれていくのは感動を誘います。
アメリカ人の弁護士がいい味を出してるし、やはり主役の藤田まことがいいですね。
藤田まことというと、「はぐれ刑事純情派」の安浦警部のイメージが強かったんですが、映画でも貫禄ありです。
部下をかばってすべての責任を負おうとする岡田中将と、すべてを知って無言で見守る家族の心のつながりや未来に向けてのメッセージ性もよいなぁと思いました。
岡田中将はやれるだけのことをやって、最後に「本望である」と一言言いました。
私が大学でかじっている倫理学などと照らしても、戦争責任の問題は一言で結論を出すことのできない難しい問題です。
すでに戦争をするためのシステムが構築され、国を挙げて殺戮行為をするとき、誰にどこまでの責任が問えるのか。
「誰にも責任がないんだよ」とか安い答えを言ってはいけないと思う。
実際に殺戮行為が行われた以上、責任の所在はどこかにあるし、それが明瞭でなくても責任を負わなければいけない人が必ず出てくるのです。
この映画は、現代の若者である私たちにとってはなじみのない岡田資という人物の責任の取り方を提示することによって、より大きな問題をわれわれに投げかけてくる良作だと思います。
場面はずっと法廷でのやり取りが中心で、回想シーンもなく、カメラワークも地味なので、すぐに寝てしまう人にはお奨めできませんが、問題意識を持ってしっかりと話を追っていける方にはお奨めです。
カメラワークの地味さや単調さは、言葉で伝わってくることの重要性を際立たせるためだったのではないかなと思いました。
ちなみに、うちの彼は隣で大号泣してましたよ。
映画館中に、すすり泣く声がいくつも。
かなり年齢層の高い雰囲気だったので、皆さん当時のことを思い出されていたのでしょうか・・・。

まゆまゆ