劇場公開日 2000年4月29日

イグジステンズ : 映画評論・批評

2000年4月29日更新

2000年4月29日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にてロードショー

クローネンバーグの変態世界にどっぷり浸かりたいなら

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痺れるほどに不道徳な映画がやって来た。いつまでも知的でエロティックな大人の悪ふざけに没頭し続けるクローネンバーグの待望の新作だ。微熱感を含む有機的な彼の独特の美学と造型センスは筋金入りで今回も健在。細波のように押し寄せる映像の波動は世界の三大珍味であるトリュフ、フォアグラ、キャビアを一緒に口に入れたような、贅沢でふくよかで崇高なる変態の味わいだ。快楽中枢が末梢までまったりと浸れる世界観がある。ストーリーはけっこう「マトリックス」と同じ。でも現実と非現実のラビリンスを描くネタはもともとクローネンバーグの十八番。気合と年期の入れ具合が違う。主人公(物?)はゲーム機器《イグジステンズ》。めまいがするほど卑猥な造型の両生類の有精卵を原料としたゲームポッドを、へその緒みたいなコードを介して骨髄に開けた第二のお尻の穴に突っ込んで作動させる。ゲームは、ゲーマーが「これはゲームだ!」と気付くまで終わらない。視覚的な変態濃度は濃ゆいけど、思想的には猥雑ではなく清潔感が漂う。個人的にお薦めなネタは蒸し魚の骨から作った拳銃のシーン。観終わったらぜひ中華料理屋に行って実践しよう(私はした!)。

大林千茱萸

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