劇場公開日 2007年5月12日

「『赤毛のアン』をモチーフとしながらも、暗さは『フランダースの犬』クラス」赤い文化住宅の初子 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0『赤毛のアン』をモチーフとしながらも、暗さは『フランダースの犬』クラス

2018年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

 初子(東亜優)は中三。幼い頃に父は蒸発、母親も亡くなり、兄克人(塩谷瞬)とアパートで二人暮し。ラーメン屋でバイトしてたけど、きびきびしてないという理由でクビ。恋心をよせる三島くん(佐野和真)と同じ高校に進学したいけど、兄は就職してもらいたいと思ってる。そんなとき、兄は工場でケンカしてクビ・・・進学を諦めてしまう。

 どん底人生という点では、カウリスマキの敗者三部作にも負けないくらいに希望の光が見えてこない。優しそうな人も周りに現れるのですが、これがまたクセモノだったり、学校の担任(坂井真紀)に至っては、完全に教育を無視してしまっている。ドジで内気な性格の初子にとっては、担任が反面教師であったり、生徒の私生活にずけずけと乗り込んでいないところも幸いする。しかし、「誰か助けてくれると思ってるの?」という彼女の言葉に愕然とし、上手くいくわけがないと思っていた『赤毛のアン』のハッピーエンドだって確信してしまうのです。

 嫌いだった『赤毛のアン』の本もボロボロになるまで読み込んでいるのは亡き母親が好きだったため。おかげで妄想癖も身についてしまっているし、心のどこかに期待している部分があったように思います。観客は「頑張れ」と手に汗握るのかもしれないけど、貧乏なものはしょうがないという諦めが感じられる・・・しかし、白馬の王子様が・・・と。

 教師のだらしなさや、周りの大人の身勝手さ、それに貧乏な者は這い上がることもままならないという描写。かなり辛らつに世の中を風刺しているし、暗いながらも仄かに希望を持たせているところが憎い。最初は兄と妹の二人暮しだから、もっとヘンテコな方向に行くかとも思わせるところもいい。脇を固める俳優もいいのです。特に大杉漣とか・・・。タナダユキって監督は知らなかったけど、なんだか凄いぞ。

kossy