劇場公開日 1982年10月23日

「流石はベルトルッチ!」1900年 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0流石はベルトルッチ!

2018年7月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

映画タイトルは誤訳で正しくは1900年代だそうです
5時間にも及ぶ超大作ながら、少しもダレ無い
お話はワンスアポンアタイムインイタリアというところか
同じイタリアの名作木靴の樹の時代直後
土地も同じく北イタリアのミラノ近くの田舎
木靴の樹の直線上にストーリーが展開していきます
映画の製作年度は本作が76年、木靴の樹は78年なので本作の方が先に作くられています
この地方出身の木靴の樹のオルミ監督が本作を見て、本当の当時の北イタリアの貧農の生活はこうだと製作意欲を掻き立てたのではないかと感じます
戦前の日本の農村よりも小作人の収奪構造が苛烈な様、資本家=地主とファシズムとの結合をじっくりと描き、故に社会主義革命が正義であると主張します
終盤では主人公のひとりオルミがカメラに向かって、つまり観客に向けて演説します
傍観していたからファシズムを育てたのだ
また傍観していると同じ事が起こるぞと
しかし、それは立派な主張だと思いますが、社会主義に幻滅し、堕落した左翼運動の末路、共産主義国家の苛烈な人権抑圧のファシズム化、帝国主義的軍事国家に成り下がった有り様を目撃してきた我々2000年代のものからみればなんと社会主義に夢を見れるとはナィーブな幸せな時代だったのかと、呆れる他ない
なにしろ我々は共産主義国家が民主化を求める人民の群衆を戦車で数千人もひき殺す瞬間を目撃しているのだ
この映画ですら地主=資本家の手先に動員された官憲の騎馬隊も路上に寝そべった農婦の集団の前には撤退したというのに
とはいえあの時代その活動があったからこそ今があるだとも感慨がよぎります
かといって政治的メッセージだけの映画かと言うとそうではない
十分に映画として楽しめる作品です
デニーロの役作りも物凄いものがあります
ラストシーンは映画の製作当時の現代になります
老人になった主人公二人が少年の時と同じ様に変わらず喧嘩をしながら登場し、アルフレードは当時と同じ様に線路に横たわります。今度はレールを枕にして
ワンスアポンアタイムインアメリカは更に8年後に同じイタリアのレオーネ監督が製作するのですが、物語の基本構造、特にラストシーンは本作と相似形を描いて明らかな影響を与えていると思います

あき240