劇場公開日 1975年4月12日

「時制が混乱した映画の始祖」スローターハウス5 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0時制が混乱した映画の始祖

2018年9月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

時制を自由に操る映画といえば、タランティーノ監督のパルプフィクションが有名だが、実は20年近く昔にやって見せているのが本作だ

タイトルを日本語に訳すと第5屠殺場
劇中で第二次大戦時にドイツ軍が捕虜収容所が不足してドレスデンの第5屠殺場の倉庫を収容所代わりに使ったことに由来する

元々はカートボネガットというそこそこ有名なSF作家の原作によるので、時制の混乱はSF風味の糖衣を被せてある

第二次大戦中の東京大空襲に匹敵する大空襲を受けたドイツの美しい都市ドレスデンの壊滅に居合わせたアメリカ軍捕虜がその惨状に今でいうところのPTSDによる記憶障害と幻覚により時制の混乱に悩まされる
こう書けば実も蓋もない

人は良い時だけを見つめて生きるべきだというのがテーマだろうか?
それは表面的すぎる

ドレスデン空爆は連合軍が軍民無差別攻撃、大量破壊の実行に麻痺していく始まりであった
その野蛮さを恥じてドレスデン空爆の凄惨な有り様を当時は隠していたのだ
しかし、歯止めは効かなくなり翌月には東京大空襲を行い、ついには広島、長崎まで行き着く

これを主人公を遠い宇宙に連れて行った宇宙人から俯瞰した時、この世界の有り様はどうみえるのか?

宇宙人が結合したのか?としつこく尋ねるように
戦争したのか?と尋ねてくるのだろうか?

あき240