劇場公開日 2006年11月18日

「理解できない復讐劇の本当の怖さ」キング 罪の王 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5理解できない復讐劇の本当の怖さ

2020年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

理解しようとしても満足な回答が浮かばない、宗教と心の闇の断絶を描いた、非常に危険なアメリカ映画だ。ダーウィンの進化論対キリスト教原理主義の構図を使用して、冷酷非情な復讐劇を晒した衝撃の問題作。本来、文学の表現領域に委ねられた題材に敢えて挑戦したジェームス・マーシュの立ち位置が中立のため、主人公の行動理由の判断ができず、観る者を金縛りにさせます。共感や感動とは対極にある忌避も、映画の表現分野になってしまった時代を象徴する力作。恐怖映画ではない日常のドラマでも、アンドレ・カイヤットの「眼には眼を」など妄執に囚われた人間の恐ろしさを描いた作品が無かった訳ではないが、これは度を超えている。
極悪無比の主人公を演じたガエル・ガルシア・ベルナルの、極普通な好青年のイメージは返って効いていて、ウィリアム・ハートの堅物牧師の演技と共にリアリティある表現になっている。
人間の所業には限りがないこの世の無情さを、、、思い知れということなのか!?

Gustav