劇場公開日 2001年1月27日

「バレエ×ミュージカルの自然な融合」リトル・ダンサー jeromisunさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0バレエ×ミュージカルの自然な融合

2019年9月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

興奮

今さら感ありありながら、
ロケットマンを観て、リトル・ダンサーに行き着きました。

ビリーの一途なバレエへの探究心が素直に描かれていて、ストーリーも消化不良皆無のとてもスマートな構成で、観入りました。

炭鉱夫がストを起こしている社会的背景で、
男は男らしくという価値観が根付いた街、家庭。
その中で、ボクシングよりもバレエに魅了されたビリーが、バレエを続けるために踊る。
子供らしい体つきで、全身全霊を振り絞って自己表現をするその踊りが、とても美しいと思えました。
なにより、バレエという題材を扱っているから、不自然なミュージカルって感じではなく、映画の中に自然とミュージカルの要素が自然に組み込まれている感じがとても良かった(急に踊り出すミュージカルも個人的には好きです)。

また、バレエ以外の要素として描かれる炭鉱夫の泥臭いストの様子が、優雅に踊る孤高の男子バレリーナのビリーと対照的で、それを見た家族の未来への希望となるのも納得だよなぁと思いました。
そして、団結してからの父は心強い。
田舎者で教養はないけど、息子の将来に賭けてみたいと全力サポートしてあげる。
自分の信念や自尊心を曲げてでも、息子を信じてあげる親子の力は凄いなと感じいる一方、頑固親父の思想を変えるパワーを発揮したビリーはさらに凄いなと思いました。

それから、子供同士ではバレエ教室の先生のませた娘と年柄にもない大人の会話をしたり、実はゲイだった親友を受け入れたり。
自分が暮らす環境下で、自分は少し変わっているという自覚を持った上で、だからこそ、他人の他人とは違う個性を受け入れる寛容さを手に入れていく過程は、価値観の広がりが大人への成長をよく表しているなと思いました。

子供が苦難を乗り越える作品は数あれど、
この映画が秀逸であるという点は、やはりビリーの人柄とダンスの能力にあるのだと思う。
冒頭と最後の飛び跳ねる彼のなんとも言えない表情、ダンスを踊っている時の余裕はないが全力投球しているとわかる表情(ないしは踊り自体も)は、鑑賞者の心をも動かすに値する、素晴らしいものだったと思う。
DVD買いたいな、と久し振りに思いました。

jeromisun