劇場公開日 2003年4月19日

「恐怖の赤い黴! 尺不足が悔やまれる映画」ドリームキャッチャー(2003) 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5恐怖の赤い黴! 尺不足が悔やまれる映画

2012年5月2日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

怖い

興奮

勝手にキング原作映画特集4。
今回は『ドリームキャッチャー』!

鹿狩りをする為、雪山の小屋に集った旧友4人。
だが1人の遭難者の来訪をきっかけに、4人は
全人類をも脅かす未曾有の恐怖と対峙する羽目になる……。

はい、最初に個人的な結論を言ってしまいますとね、
コレ、失敗作です(爆)。
キング原作の映画化がいかに難しいかを
如実に示した映画とも言えます。
なにせ監督・脚色はローレンス・カスダン。
アカデミー賞脚本賞ノミネート経験がある方
にも関わらず、とんでもなくとっちらかった
映画が出来上がっちまった訳ですよ。
(まあ原作自体が色んな要素を詰め込み過ぎてる気も……)

とはいえ、前半はかなり面白い。
氷をモチーフにした不気味なオープニングは期待を
持たせるし、赤い黴、雪道に座る女、逃げ惑う動物たちなど、
何かとてつもなく危険な存在がじわじわ浸食してくる雰囲気は見事。
原作でも印象的だったトイレの場面には顔が引きつりそうになるし、
軍が○○○を襲撃するシーンはエンタメ的にかなりの迫力だ。

が!
怪異の正体が明かされた辺りからの展開がヒジョーに不味い。
人物描写が不足している為にその後の展開に説得力
が無く、おまけに主人公らの少年時代に関する
伏線回収などで物語のテンポがガクッと落ちる。
そしてそのまま……衝(笑)撃のラストへ雪崩れ込んでしまう訳で。

キング原作は読むと映像が浮かび易いと言われるが、
実は情景描写以上に登場人物の心理描写がかなりの
ウェイトを占めていて、それを映像として翻訳しきれ
なかった結果、極めて凡庸な出来になってしまう例が多い。
おまけに『ドリームキャッチャー』原作は全4巻
という長大な内容である事に加え、最後の決着は
登場人物らの思念の世界で展開されるのだから、
2時間程度の映画に収めるのは厄介極まりない。
まさに鬼門ですよ、鬼門。

一体どうやって最後の決着を映像にするのかと
危惧していた僕だったが……結果は……原作とは
全く異なる……あのトホホなラストに……。
やっぱ尺不足だよね。

原作ファンには激怒されるだろうが、
いっそ少年時代のエピソードをまとめて冒頭で
見せるかバッサリ削るかしてしまい、あとは
パニックホラーとしての映像的ケレンを追求した方が、
映画としての面白さやまとまりは上がったかも知れない。

ま、そんな文句は“下手の横見”ってヤツ。
TVシリーズでも良いからリメイクして欲しいなあ。

<了> ※2012.05初投稿
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余談:
僕の大好きな漫画家に 山本さほさんという方が
おられるのだが、この方の『岡崎に捧ぐ』第3巻に
掲載された『ドリーム・キャッチャー』評漫画が
ドンピシャで爆笑もんである。ボロクソ描いて
おられるが、むしろ観直したくなるので是非。

浮遊きびなご