この映画は、今となっては古さは否めないものの、舞台を国連に置き、本部のあるニューヨークでアフリカのとある小さな国の大統領が演説をするというスケールの大きさは、サスペンスの舞台として申し分ない。
この国は民族紛争が盛んで、通訳が偶然国連の事務所に忘れ物を取りに来た際にシステムが会場の音を拾っていることに気づくが、その内容はその大統領暗殺計画に関するものだった。
ニコール・キッドマン演じる通訳の主人公がその内容を聞き取ってしまったことがこの物語の原動力となる。
彼女を護衛するショーン・ペン演じるシークレットサービスは、わずか1週間前に妻を自動車事故で亡くしているという設定だ。
また主人公は過去に反戦活動に参戦していたが、その大統領が自分の地位の保全のために様々な悪事を行っていることを知り、足を洗う。
しかしながら彼女の兄は現在も戦い続けていて行方がわからない。
アメリカ政府は、国内で他国の大統領の暗殺など行われれば立場がないと言って警備を厚くする。
このような状況下でバスの爆弾テロが発生、大統領の命の危険が危惧される。
この映画のややこしさは、
誰か複数人が、大統領暗殺について話していたことを聞いてしまいましたという、ニコール・キッドマンのアナウンスから始まる。
彼女には過去も含め、母国や大統領に関し様々な思いがあったことが話をややこしくさせている。
アフリカの小国何の民族紛争については、アメリカはあまり興味を持っていない。
公安はタッグを組みながら捜査する。
にも関わらず、国連の演説会で暗殺が実行されようとするのは、昔ながらのサスペンスのあり方なんだなと感じた。
結局ニコール・キッドマンは国外退去命令となるが、兄のことも大統領のことも、自作自演暗殺パフォーマンスに関わった輩もすべて解決していまう。
あとに残ったのは彼女の家族全員がテロによって死んでしまったという事実と、ショーン・ペンの妻が事故死してまだ23日だということをお互い話して映画は終わる。
そこに勝手な正義など微塵も描かれていないところが、まあ良かったと言えるのかもしれない。
人気取り作戦で計画された大統領暗殺未遂事件は、自作自演だったというのがオチだが、実際に身内を失くすということがどういうことなのか? 大きな権力に対する明確な言及的言動が欲しかった。