劇場公開日 2005年3月12日

「オウムじゃなくてカナリア」カナリア クリストフさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5オウムじゃなくてカナリア

2019年8月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

興奮

テーマが素晴らしい。カルト教団に残された子供のその後。
こーゆー人たちは間違いなくいた訳で、
光一の母の実家に帰るシーンがあって、その家の惨状を見ると、
教団は解体して実社会に復帰しようと思っても、
世間の目は恐ろしく冷たく、
結果後継団体に戻ってしまうのも頷ける。
でも子供には選択肢は少なすぎる。
ましてや光一は別に教義に執着がある訳ではなく、
ただ、母と暮らしたい、という思いだけで、
その母は教団の事件の首謀者として逃亡中。
(あの、ワーク、ってやつでしょうな)
とりあえず妹の行方もしれず、ただ東京へ向かうしかなかった。

その道中ひょんな事で知り合う由希。
12歳にして母もおらず、すでに援助交際で稼ぐ術を知る少女。
由希は家族に絶望していたが、拠り所が欲しかった。
たまたま助けてくれた光一についていく事で、
新しい未来が見えると思っていた。

この二人のロードムービーだが、東京にはすんなり着く。
合間に入ってくるのは、光一家族の教団での風景。
「尊師様」と呼んでいるが、尊師は出てこず、
子供施設の教団幹部に西島秀俊が登場。
光一は入団当初から反発したが、母に会える事を信じて耐える。
そもそも母がなぜ入会したか、も語られるが、
完全にマインドコントロールされて入った様子。

その西島ら元信者たちと東京で出くわし、母の情報を探る二人。
ここでの数日の二人は平和で良かったですねー。
おばあちゃんとの折紙のやりとりとか、仕事してる姿とか。

そしていざ妹を取り返そうと祖父の家への道中、
ニュースで母の情報を知る事になるが、
このTVを見た定食屋での行動とか、
由希が金策のために乗った車に光一がした行動とか、
ラストの祖父の家での行動とか、
完全に犯罪なんだけど不問なんですよ。
定食屋と車の件では見てる人も多いので完全にアウトです。
祖父の家での事は祖父次第なのでいいが、
光一はなんであんな姿になってるの?
(一瞬、双子の弟が登場かと思った)
しかもそれについて由希すら不問なの?

そーゆーツッコミどころや、無駄に長回しなシーンとか、
2時間超える程ではない内容でしたが、
社会から黙殺されてる存在に焦点を当てたテーマを、
既に10年前に作られていて、今やっと見られた事に感謝。
「オウム事件」の記憶が鮮明な人ほど楽しめる作品です。

クリストフ