劇場公開日 2006年12月16日

「鼻が特徴的な名優対決」あるいは裏切りという名の犬 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0鼻が特徴的な名優対決

2018年10月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ジェラール・ドパルデューは好きな俳優の一人ですが、フィルム・ノワール作品だけあって鼻の陰影もくっきり描き出されているため、どうしても目立ってしまう。いかに男根鼻といえどもモザイクをかけるわけにはいかないので、ライバルの警視には同じく鼻が印象的なダニエル・オートゥイユが起用されている(彼が主人公)。

 “36”というタイトルがど~んと描かれ、どこの誰が“犬”なんだかとワクワクしながらのめり込んだ前半。現金輸送車強奪事件が連続し、9人もの人が殺されていた。そんな物騒なパリであったけど、警察内部では長官(アンドレ・デュソリエ)の昇進が決まっていて、この事件をBRIのレオ・ヴリンクス警視(オートゥイユ)とBRBのドニ・クラン警視(ドパルデュー)が追うことになった。事件を解決すれば次期長官に・・・と野心に燃えるクラン。一方のレオは出世欲は感じられないのだが・・・

 情報屋という存在が大きかった。難事件を解決するにも信用度が低い彼らの情報も無視はできない。大体が犯罪者であったりするのだが、時として貴重な情報源となったりするのだ。2人のライバル警視は情報屋を殺されたり、その情報屋に利用されたりと、捨て駒であるはずの彼らに運命を翻弄されるところが見ものなのです。そして裏情報を得たヴリンクスは見事に事件を解決し、クランは失脚するかに見えた・・・

 立場が逆転して投獄されたり、最愛の妻を失ったりで奈落の底へ突き落とされたかのような男を演じたオートゥイユがしぶかった。ドパリュドゥーやドゥソリエも鋭い眼孔の奥底で、口には出さない心理が読み取れるところが凄い。そしてもう一人、ヴリンクスの部下であったティティが物語の最大のキーパーソンになるところも脚本の素晴らしいところだ。

kossy