劇場公開日 2003年5月24日

「【定年退職を迎えた男が42年連れ添った妻を突然亡くし・・。人生を見つめ直すことになった男を演じるジャック・ニコルソンのユーモアとペーソスと悲哀漂う姿が、可笑しくも胸を打つ作品である。】」アバウト・シュミット NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【定年退職を迎えた男が42年連れ添った妻を突然亡くし・・。人生を見つめ直すことになった男を演じるジャック・ニコルソンのユーモアとペーソスと悲哀漂う姿が、可笑しくも胸を打つ作品である。】

2022年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

幸せ

■一流保険会社を定年退職したシュミット(ジャック・ニコルソン)。
平凡ながら幸せに暮らしてきた彼は、これから悠々自適の生活を送る予定だったが、妻ヘレンが急死。
 今までの人生を見つめ直した彼は、愛する一人娘ジーニーの結婚式を手伝おうと、キャンピングカーで娘の住む地、デンバーへ向かうが…。

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・冒頭の、シュミットが5時キッカリに会社を出るシーン。彼の定年退職の日だ。だが、彼を送る者はいない。そして、定年退職を祝う会場に出向く。
ー シュミットの最終役職が”副部長”という設定が絶妙である。役員が見える地位でもないが、偉く無い訳でもない。微妙なポジションなのである。(副部長の方がいらっしゃったら、スイマセン。)-

・その会場で、彼の地位を引き継ぐ若手のやり手の男への、嫌みタップリなスピーチ。
ー シュミットが、”小物”であることが分かる。だが、彼は愛すべき”小物”なのである。-

・毎日が日曜日になったシュミットだが、7時キッカリに眼を覚まし、郵便受けまで行って郵便に眼を通す。その中に有った、”チャイルド・リーチ”の案内の封筒。何気にそれを開けたシュミットは、アフリカの恵まれない子供達への一日22ドルの、献金に応募する。そして、彼は6歳の少年ン・ドゥグの養父になり、日々の徒然の想いを手紙に認める。
それは、主に妻、ヘレンに対する文句である。彼女の体臭、小用をするときに”座ってしろ!”と言われた事に対する憤慨・・。
ー だが、実際には彼はヘレンを愛しているし、小用をするときにも座っている・・。シュミットは”小物”ながらも良き男なのである。-

・そんな時、妻ヘレンが突然他界する。呆然とするシュミットだが、妻との旅行のために購入したキャンピングカーで、自分が生まれた土地、育った学校を訪れる。そして、結婚式の用意でバタバタしている娘の所にも行こうとするが・・。
ー この辺りのシュミットの”小物”感をジャック・ニコルソンが、絶妙に演じている。まさかの親友レイが、ヘレンに送っていたラブレターの束を見つけるシーンなど・・。又、漸く念願叶い、立って小用をするシーンなど、脳内爆笑である。何やってんだ!-

・そして、シュミットが最後まで結婚を反対していた、ジーニーの夫のランドールの家を訪れるシーン。ランドールの母、ロバータ・ハーツェルを演じるキャシー・ベイツの破天荒な姿が笑える。
ー 何処の家でも、一番偉いのは奥さんなのである・・・。-

・ジーニーの結婚式の前、シュミットがランドール家のウォーターベッドに馴染めず、首を痛めるシーンも可笑しい。何とか、父親としてソコソコ立派なスピーチをこなし・・。

<漸く、家に戻り、届いていた郵便の数々の中で見つけた、”チャイルド・リーチ”からの手紙。
 そこに書かれていたシスターからの、自分が養父になった6歳の少年ン・ドゥグの近況。
 そして、未だ字が書けないン・ドゥグが書いた、稚拙だがウォーレン・シュミットと、ン・ドゥグが笑いながら、手を結んでいる絵。
 それを見た、ウォーレン・シュミットが、驚きから徐々に涙を浮かべて行く表情。
 名優、ジャック・ニコルソンの真骨頂のシーンである。
 今作は、定年を迎えた、不器用だが、愛すべき一人の男の姿を見事に描き出した作品である。>

NOBU