劇場公開日 2003年12月6日

ファインディング・ニモ : インタビュー

2003年12月1日更新

ピクサー映画が世界中でヒットする理由

全作が世界中で大ヒットする映画界唯一の勝率100%スタジオ、ピクサー。なぜそれが可能なのか? これまでピクサーの代表作を監督してきたジョン・ラセターにその理由を直撃取材。さらに彼が宮崎アニメを敬愛する理由も判明。世界制覇を可能にする作品の必須条件はコレだ。(編集部)

ジョン・ラセター インタビュー:ピクサーの経営理念
「社員はみんな人生をアニメに捧げているんだ」

――「モンスターズ・インク」に続いて、監督を新人に任せていますね。ピクサー映画というと、ジョン・ラセター監督作というイメージがあったのですが。

「僕はピクサーで2つの役職を兼任しているんだ。まずは、1人の映画監督として、その作品製作の全ての段階に関わることで、今は『Cars』(05年公開予定)の監督をしている。で、もう1つは、クリエイティブ部門のチーフという立場から、ピクサーの全作品を管理すること。僕が監督をしない作品や、映画宣伝グッズ、Tシャツなど、クリエイティブに関することには全て目を通さなくてはいけない。おもちゃの企画にはどうしても一番力が入ってしまうけど(笑)」

――(笑)

「ピクサーの当面の目標は、毎年1本映画をリリースすることで、その目標を達成するには、当然、僕以外に監督が必要になる。1つの映画には4年の月日がかかるし、僕自身が監督をするときは、自分の作品に110%の力を注ぎたいしね。『ファインディング・ニモ』のアンドリュー・スタントン監督は、大学の後輩なんだ。学生時代から彼の才能は光っていてたけど、『トイ・ストーリー』をやっているとき、僕は、彼が絵を描くセンスが抜群なだけでなく、素晴らしいストーリーテラーであることに気がついた。それからは、『トイ・ストーリー2』『バグズ・ライフ』『モンスターズ・インク』と、全てのピクサー映画の脚本に参加してもらってるよ」

――来年全米公開予定の「The Incredibles」の監督ブラッド・バートは、「アイアン・ジャイアント」を別のスタジオで製作しましたが、今はピクサーの社員なんですか?

「うん。ブラッドは大学時代の同級生で、ディズニーでも一緒にアニメーターをやっていた。彼がピクサーにやって来たとき、僕は『お帰り』って迎えたよ。このスタジオこそ、彼がいるべき理想の場所だから。ちなみに、『The Incredibles』には期待しててよ。本当にインクレディブルな仕上がりだから(笑)」

――楽しみです。これまでのピクサー作品は全てクオリティが非常に高く、ブロックバスターとなっています。他のスタジオと何が違うのでしょうか?

「他のスタジオはビジネスマンが経営しているが、ピクサーは、アニメを愛する人しかいないアニメーション・スタジオなんだ。僕は人生をアニメに捧げているし、社長のエド(・キャットムル)にしても、アニメーターになることを夢見ていたぐらいだからね」

――具体的には、どんな違いがあるのでしょうか?

「ここを素晴らしいスタジオにするために、僕らは3つのことを実践している。まず、スタッフみんながクリエイティブ面で満足感を味わえる環境にすることで、例え些細なことでも、そこに個人の創造性を注入するチャンスを与える。僕が以前働いていたスタジオは、単純作業ばかりで、スタッフは歯車の1つに過ぎないと感じていたけど。2番目に、相応のギャラを払うこと。3番目に――実はこれが一番大事なことなんだが――とにかく仕事を楽しめるようにすること。規則は最小限で、服装も勤務時間も自由。スタッフが心から楽しんで仕事をしてくれれば、作品は素晴らしいものになると信じている。だから、ピクサーには、他のスタジオのような雇用契約がない。辞めたければいつでも辞められる状況にあるけど、みんなが今こうして残っているのは、ここでの仕事が楽しいからなんだ。僕もこの会社を心から愛しているよ」

インタビュー2 ~ジョン・ラセター インタビュー:宮崎駿のアニメの魅力
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