マジェスティックのレビュー・感想・評価
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マイケル・スローン脚本のヒューマン・ファンタジー
【概要】戦争で多くの若者を失った町の失望と希望を映画へのオマージュを絡めて描く
【感想】社会に流されてきた男がアイデンティティに芽生える物語で真の自由と自分を問う
【哲学】人は自信を得て本来の自分を見つける
【90.1】マジェスティック 映画レビュー
フランク・ダラボンという作家は、常に「失われたアメリカ」の断片を拾い集め、そこに宿る高潔な魂をスクリーンに投影し続けてきた。ショーン・シャンクの空を見上げ、グリーンマイルの奇跡を信じた彼が、三度目の正直として挑んだ本作「マジェスティック」は、ハリウッドがかつて持ち合わせていた古典的叙事詩への回帰であり、同時にマッカシズムという負の歴史に対する痛烈な反論でもある。映画全史において本作を位置づけるならば、フランク・キャプラが築き上げた「正義と良心」の系譜を継承し、それを二十一世紀の技術と感性で再構築しようとした、極めて野心的でノスタルジックな人間賛歌といえる。
作品の完成度という点において、本作は極めて高い水準にある。上映時間百五十二分という長尺は、現代の娯楽映画としては冗長に感じられるかもしれないが、ダラボンは一分一秒を惜しむことなく、主人公ピーターが記憶を失い、見知らぬ町ローソンで新たなアイデンティティを形成していく過程を丁寧に描き出した。そこには、忘れ去られた映画館の再建という物理的な再生と、戦争で傷ついた人々の心の再生が美しくシンクロしている。脚本を担当したマイケル・スローンは、記憶喪失という古典的なモチーフを使いながらも、それが単なる舞台装置に終わらないよう、アイデンティティの不確かさと、真実を語ることの重みを物語の核に据えた。中盤、ピーターが戦没英雄ルークとして生きる喜びを見出す場面の多幸感と、終盤、公聴会で彼が迫られる道徳的選択の緊迫感の対比は、脚本構成として非常に緻密である。
監督のダラボンによる演出は、あえて「古臭さ」を恐れずに正攻法を貫いている。黄金期のハリウッド映画を彷彿とさせる流麗なカメラワーク、そして感情を増幅させるライティングは、観客を千九百五十年代の静かな田舎町へと誘う。編集の面でも、スローテンポながらも確実に感情を積み上げていく手法が取られており、物語の終盤に訪れるカタルシスに向けて観る者の心をじわじわと温めていく。
キャスティングにおける最大の勝因は、主演のジム・キャリーにピーター・アプルトン(ルーク・トリンブル)役を託したことだろう。ジム・キャリーは、それまでのコメディの帝王としての仮面を脱ぎ捨て、内省的で繊細な演技を披露している。彼は、赤狩りの標的となった若き脚本家としての野心と、記憶を失い戦没英雄として迎え入れられた男の当惑、誠実な青年ルークとして町の人々に愛されることへの戸惑いを見事に演じ分けた。特に、公聴会の場で見せる、自らの誇りと憲法を守るための静かなる決意の表情は、彼のキャリアにおける最高到達点の一つと言っても過言ではない。その一挙手一投足に宿る悲哀と誠実さは、単なる主役を超え、この映画の道徳的背骨として作品全体に深い説得力を与えている。
助演陣もまた、この重厚な物語を支える不可欠なピースである。まず、ルークの父親ハリー・トリンブルを演じたマーティン・ランドーは、息子を失った深い悲しみと、奇跡の再会を信じようとする盲目的な愛を、年輪を感じさせる佇まいで体現した。彼の温かくも切ない眼差しは、観客がこの町を愛さずにはいられない動機を生み出している。次に、ルークの恋人アデル・スタントンを演じたローリー・ホールデンは、理知的な弁護士という役どころを通じ、盲目的な熱狂に流されない凛とした美しさを見せた。彼女の存在は、ピーターが自分自身を取り戻すための道標として機能している。ローソンの町長アーニー・コールを演じたジェームズ・ウィットモアは、重厚な演技で町の歴史と権威を象徴し、彼の言葉一つひとつが物語に深みを与えている。そして、クレジットの最後に名を連ねるエドワード・コンクリンを演じたボブ・バラバンは、公聴会の諮問委員として冷徹な役回りを演じ、作品に社会的な緊張感をもたらした。
映像面では、美術と衣装が特筆に値する。舞台となるローソンの町並みは、架空の場所でありながらも、観る者に郷愁を抱かせるリアリティを持っている。特に、映画館「マジェスティック」が修復されていく過程は、映像の質感そのものが輝きを増していくようで圧巻である。一方、音楽のマーク・アイシャムは、オーケストラを中心としたクラシックな旋律で、物語の叙情性を最大限に引き出した。劇中で重要な役割を果たす曲、あるいは主題歌という特定の定義を超えて、全編に流れるノスタルジックな調べが、失われた時代への追悼歌として機能している。
本作は、受賞歴という数字上の記録においては、フランク・ダラボンの前二作に比べると控えめである。アカデミー賞や主要な映画祭での大きな受賞こそ逃したものの、時代に翻弄される個人の尊厳を描いたその精神性は、批評家の間で高く評価された。マッカシズムというアメリカの恥部を背景にしながら、憲法修正第一条を引用して良心を守り抜く姿を描いた本作は、単なる懐古趣味の映画ではない。それは、現代においても形を変えて存在する集団心理による弾圧に対する、静かなる抗議声明なのである。映画とは、暗闇の中で光を見つめる体験であることを、本作「マジェスティック」は自らの存在を以て証明している。
作品[The Majestic]
主演
評価対象: ジム・キャリー(ピーター・アプルトン/ルーク・トリンブル)
適用評価点: A9
(評価点 9 \bm{\times} 乗数 3 = 27)
助演
評価対象: マーティン・ランドー、ローリー・ホールデン、ジェームズ・ウィットモア、ボブ・バラバン
適用評価点: A9
(評価点 9 \bm{\times} 乗数 1 = 9)
脚本・ストーリー
評価対象: マイケル・スローン
適用評価点: A9
(評価点 9 \bm{\times} 乗数 7 = 63)
撮影・映像
評価対象: デヴィッド・タッターサル
適用評価点: A9
(評価点 9 \bm{\times} 乗数 1 = 9)
美術・衣装
評価対象: グレゴリー・メルトン
適用評価点: A9
(評価点 9 \bm{\times} 乗数 1 = 9)
音楽
評価対象: マーク・アイシャム
適用評価点: A9
(評価点 9 \bm{\times} 乗数 1 = 9)
編集(加点減点)
評価対象: ジム・ペイジ
適用評価点: 0
(加算点小計から 0 を減算)
監督(最終評価)
評価対象: フランク・ダラボン
調整前合計点: 126
(27 + 9 + 63 + 9 + 9 + 9 - 0 = 126)
総合スコア:[ 90.1 ]
見終わった後に「いい映画みたな」という気持ちにさせてくれる作品
評価高いな
名優ジム・キャリーと映画の魅力
物語がつながらない
1950年代。赤狩りにより映画界を追われた脚本家。記憶喪失になり辿り着いた村で大戦の未帰還兵に間違えられ、騒動の中心となってしまうお話。
物語は二つのテーマが描かれます。
一つは、記憶喪失の主人公が辿り着いた街。多くの若者を大戦で亡くし悲嘆に浸り、寂れ、活気を失った街が、主人公の『帰還』で笑顔と活気を取り戻す様が描かれます。レッドパージが吹き荒れるアメリカ社会から隔離された、御伽の国のような街で繰り広げられるファンタジー。
終盤からはリアル。レッドパージに対するハリウッドの、そして監督フランク・ダラボンの怒りを、主人公を通して訴えます。
ただ、私的評価は3。
どうしても、上記二つの主題が私にはつなぎ合わせることが出来なかったのが理由です。極端に言えば、まったく別のお話のように感じられます。
結果、クライマックスのカタルシスを感じることが出来ませんでした。
例えば、記憶喪失が中盤で治り、主人公のレッドパージへの恐怖と諦めを描けていれば、物語をつなげることが出来たかもしれませんが・・・
グレースケリー似の女優を使った効果
ゆっくりとしたストーリー展開でじっくりと話が進んでいく。そのような雰囲気が全体を貫く演出としてぴったりいっていて絶大な効果を出しつつラストに至った。
とくに最初に出てくる女優と、その次に出てくる女優が同じ(そっくりな?)女優を起用してるところが非常に効果が高かった。それによって別世界できたんだという感覚が固定化されたように思う。そしてその女優は元から顔がグレースケリーに似ているだけでなくメイク、髪型、写し方がそのようになっており、見るものを古き良き時代へ誘い込んだ。
それで結局ことの真相がアレしたらどうするんだろうと言うサスペンスが非常に効いていて途中のロマンスのシーンが結構長すぎるのだが見るものを虜にし続けたと思う。
最初のシーン、その次のシーン、クライマックスに向かってくるシーンの数々、そしてクライマックスと主人公の心境の変化とかその時その時の心境とかがめっちゃ良く描けている。脚本家とお手本とすべき素晴らしい脚本だ。
主人公が脚本家なのでこの素晴らしいオリジナル脚本を誰が書いたのか調べてみた。マイケル・スローン・・・全然知らないし過去に大した映画脚本も書いていないようだ。一体何者だろう ・・・
この作品は日本の映画.comでは4.1スコアー。どうしてLetterboxdでは3.3と低いのか良くわからない。監督に対する期待が大きすぎたのかな?
カメラはとっても上手い人でフィルムで撮った写真がことごとく美しい。
フィルムカメラで撮った映像には独特の色調とボケの味わいがありデジタルで撮ったものより遥かに心に響くものがある。映画監督よ、映画はフイルムで撮れ。
ミストと同じ監督とは思えない
町の人が自分をルークだと勘違いしているシーンを見たとき、「渚の果てにこの愛を」を思い出したのはたぶん私だけだろう。今現在、その映画のレビューを書いているのは私だけだから。
それはともかく、ラスト、流れから言って、絶対彼女は駅で待っていると思っていた。ただ、てっきり1人で待っていると思っていたら予想外の展開に。「幸福の黄色いハンカチ」でハンカチが1枚と思っていたら、違っていた感じかな。
最後のキスシーンからエンドロールに流れるナット・キング・コールが歌うI Remenber Youが、ハッピーエンドの余韻にしたれるいい雰囲気を醸し出している。ちなみに駅に着いた時は、「シング・シング・シング」が多分地元の吹奏楽団によって演奏される(確認はできなかったが)。
途中まで、もしかしたらファンタジー映画かなと思う展開だったが、その後リアルな話となり、最後の聴聞会の彼の演説からラストまでは一気に感動を盛り上げてくれた。
記憶喪失ものの傑作「心の旅路」が、記憶を取り戻した瞬間、彼女が自分の妻だったことに気づく感動のラストとなるが、この映画では彼女とは赤の他人であったと分かって彼女が去ってしまうシーンは、ちょっと切なかった。ただ、このことによって最後のハッピーエンドへの展開がより効果的になったのは間違いない。
<その他>
主人公が乗っていた車(川に落ちてしまうが)が実にきれいなクラシックカー(ベンツ?)だった。
映画ファンにはたまらない作品
赤狩りのためにハリウッドの有能なスター、スタッフが次々と職場を追われた事実が真に伝わってくる。ストーリーの中心は映画と音楽、赤狩りと自由についてと基本の筋が有機的に繋がっていく。映画で言えば『ゾラの生涯』『巴里のアメリカ人』『欲望という名の電車』等など、名作を次々と織り交ぜていきます。
音楽ではベニー・グッドマン中心だったような気がする。スペンサーが良かった。最後のナットキングコールも気持ち良かった。
自由について考えれば、今のアメリカの風刺とも取れますね。合衆国憲法に明記されてる「自由」とは?と考えさせられます。とにかく、泣けるシーンが3箇所!全てはまってしまいました。もうジム・キャリーがコメディアンじゃなくても成功できる!とかの意見はどうでもいいくらい感動できました。
見所は、声だけのカメオ出演マット・デイモン!(見所じゃなくて、聞き所か・・・)
In a place like this, the magic is all around you. 映画館って良いよね。
監督が「ショーシャンクの空に」のフランク・ダラボンって事を知らずに観た本作。そりゃ面白かったはずだ‼️
今はVODが発達しちゃって家でおもいっきり気軽に映画を楽しめる世の中じゃないですか?言うならレンタル店にすら足を運ばず、それこそディスクの出し入れで動く事すらしないで家でゴロゴロした状態から直ぐに映画が観られる生活。タブレット使えば座る事もなしで映画が観れるというグータラする事が好きな人間には最適な環境だったり。もちろんそれはそれでメッチャ恩恵を受けているのですが、それでも映画館で観る事って格別だと思うんですよね。個人的に映画館に行くのは大好きなので、映画館とそれを取り巻く町の人々の再生を描いた本作が自分にヒットしない訳がない!特にあのハリーが映画館の素晴らしさを語るシーンが良かったです。
で、ジム・キャリーが良いんですよね。元々コメディアンでオーバーアクトするのも大好きなんでしょうけど、本作ではグッと押さえたシリアスな演技で。コメディアンって演技の幅が広いって思っているんですけど、こういう作品観るとジム・キャリーって演技上手いよなぁっと思います。
言うなればめちゃめちゃ王道で、物凄いインパクトのあるストーリー展開とかではないのですが、こういったストレートな作品って心に染みますよね。親子の再生、恋愛の再生、町の再生、アメリカ国民としての権利の再生。色んな再生の物語が詰め込まれてる本作。日本人の私が観ても十分面白かったので、もしアメリカ国民だったらもっと楽しめたのではないかと思いました。
でも、ルークの声がマット・デイモンだったのにはビックリ‼️
久々の五つ星
ジムキャリーの映画は全部観たつもりでいたのに、こんな良い映画を見逃していた!
ジムキャリー、大好きなのに!!途中、いつものジムキャリーらしいシーンが出てきて益々楽しくなってくる。ピアノのシーンとか。とにかく観て!心温まる映画。
※ここからはネタバレあり
お父さんが事故の記事が載っている新聞を読んでいるシーンがある。一面の様だしきっと読んだに違いない。実はお父さんもジムより先に勘付いていたのでは?何度も観ているうちにそう思い始める。事故前まではジムは「長い物には巻かれろ」的な人だったのに、この街に来て様々な人と触れ合い、何より彼女アデルからの影響で信条を変えず自分の意見を言える人に。愛が溢れる街、縁もゆかりもないけど皆心良く受け入れてくれて最高のラスト!!
これは名作
記憶喪失ものはいくつもあるけど、時代背景は戦後、ヒステリックなレッドパージの嵐、朽ち果てた映画館の復活、ラブロマンスを色々からめて、素敵にまとめている。
アメリカの自由と正義を問い掛けるスピーチは締めたな。嘘から始まった真、最後にきちんとメッセージを残し、観客の胸を打った。
大人のファンタジー
ハリウッドにしてみれば屈辱の黒歴史、レッド・パージの話に絡めて失意の主人公を人違いとは言え温かく迎えてくれたローソンの町の住民との人情物語を奇をてらわず堂々とそして極めてベタに描いています。ローソンは素敵な街並みで行きたくなりますがファーンデールをモデルにした架空の町、マジェスティック劇場もセットでした、残念。
ストーリーも単純明解、キャラクターもごく自然、こういう人いるよなと思えるか善人ばかりで嘘っぽいと思うかは微妙ですがある種大人のファンタジー映画と思えば良いのでしょう、今どき貴重です。
ジム・キャリーもコメディアン演技を封印して好演です、脇も渋いところで固めているので安心して観ていられます。冒頭のスタジオ幹部のシナリオいじりから終わりの同様な直しのシーンにひっかけるハリウッドの自虐ネタは受けました。ラストのナット・キング・コールのI Remember Youの被せ方も絶妙であまりのオーソドックスさに思わず笑みがもれました、普通は恥ずかしくてここまでベタには作れる監督はなかなかいない、と妙に感謝感激です。
寸分の隙も無いリアリズムでファンタジー
名匠フランク・ダラボンが、映画に向けて送った熱いラブレター
1951年、赤狩りの横行するハリウッドの若手脚本家ピーターは事故により記憶をなくしてしまい、ある勘違いから田舎町ローソンで映画館復興のために働き始めるようになるのだが…というヒューマン・ドラマ。
監督/製作は『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』のフランク・ダラボン。
主人公ピーターを演じたのは『マスク』『トゥルーマン・ショー』のジム・キャリー。
フランク・ダラボン監督作品ということで鑑賞。吹き替え版での視聴です。納谷悟朗さん最高!
『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』に比べると圧倒的に知名度が低い気がする本作。興行収入も大コケのようですね…
しかし、流石ダラボン作品。クオリティは非常に高い!『ショーシャンク』と比べても遜色のない素晴らしい映画でした。
ハリウッド黄金期を思わせる夢と希望に溢れた堂々たる王道映画。
そのためシナリオには意外性は無いが、これこそが映画だと思わせてくれる力強さを感じさせてくれる。
直球ど真ん中の王道ハッピーエンドではあるが、決して毒にも薬にもならない作品ではない。
ハリウッドで一流脚本家になることを夢見る主人公ピーターが理想とする映画、「痛み、尊厳、人間の本質、真実…」というテーマを映画中で完全に体現している。
ジム・キャリーといえばコメディー役者のイメージだったが、本作での演技は素晴らしかった。
軽薄で信念を持ち合わせていない小金持ちと、誠実で実直な青年を完璧に演じ分けており、こんなに良い役者だったのかと驚いた。
ハリウッドでの赤狩りという、正直日本人にはあまり馴染みのない事柄を描いているため、始めは少し飲み込みづらいとも思いましたが、人々との交流、夢のような恋、親子の絆、希望と信念といった人間にとって普遍的なものを描いており、予備知識がなくても全く問題なく楽しめると思います。
クライマックスでのピーターの演説は感涙もの。
体制に立ち向かい、自分の真実と信念を貫く主人公の姿には勇気をもらえます。
万人にお勧めできる、「映画の魔力」が詰まった傑作です!
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