劇場公開日 2006年2月11日

「戦争に翻弄された兵士たちの青春映画」ジャーヘッド 松本一輝さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0戦争に翻弄された兵士たちの青春映画

2021年8月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

湾岸戦争を描いたアクションものだと思っていたが、反戦の皮肉が効いた兵士たちの青春映画だった。

本作は圧倒的に生々しかった。

この映画、最後まで見ると、結構考えさせられるいい映画を見たなって気分になったのだが、如何せん途中経過が長すぎた。待機する日々、空虚な日々が退屈すぎて、飽きてしまった。だかその、映画を見ていた時の”飽き”でさえ、最後まで見た時の主人公に共感できるスパイスになったのが素晴らしかった。

本作は、忠実に再現し、リアルを追い求め、そこには妥協がないことで定評のあるメンデスが監督をし、湾岸戦争を体験した兵士の日記を原作にした作品ということもあってか、細部まで拘って、丁寧に作られていたなという印象。

全編通して、ただただ空虚でしかないことと、海兵隊の蔑称である”ジャーヘッド”が上手くかけられていて、最後にこのタイトルをつけたのに対して、なるほどなと納得できた。

戦争に参加したのに、1人も殺せないで、戦争に行った意味も見いだせないで終わったら何のために今まで青春時代を犠牲にして、訓練や待機してきたんだ、というスウォフォードの相棒の上官に対する悲痛な叫びが、物凄く伝わってきたし、めちゃくちゃ感情的になった。

スウォフォードが帰ってきて、彼女に裏切られていた時の、ジェイク・ギレンホールの哀愁溢れる顔から、戦争の空虚さが伝わって、ただただ虚しかった。ほんと、物凄く反戦的な作品。

俳優の演技は緊迫していて、真に迫るものかあったし、物凄く引き込まれた。主演ジェイク・ギレンホールとピーター・サースガードの2人はもちろんのこと、ジェイミー・フォックスやデニス・ヘイスバートなどで脇を固めていたのも良かった。配役の勝利。

確かに何もしないで時間だけが過ぎていく空虚な戦場の日常に焦りを感じている主人公を、反戦というテーマでうまく絡めた戦争映画を作り上げた一方、最初に書いた通り、途中ダレ過ぎていて飽きたし、つまらなかったり、汚かったり、不快なシーンが多かったので映画としては評価が低い。

本作は深いメッセージ性を秘めている作品であるが、一言で表すと、つまらないとかで終わりそうな映画であった。

逆に本作で、思ったよりも支持を得られなかったメンデスだからこそ、メッセージ性もあり、戦争映画としても楽しめる”1917”を作ってリベンジしたのかもしれない。

松本一輝