劇場公開日 2007年3月3日

ゴーストライダー : インタビュー

2007年3月1日更新

「ゴーストライダー」と「デアデビル」、アメコミ・ヒーロー映画2作を大ヒットさせた監督マーク・スティーブン・ジョンソンは、64年米ミネソタ生まれの43歳。10歳くらいの息子と一緒に初来日した彼は、大きな声で話し、よく笑うナイスなオヤジだ。(聞き手:平沢薫)

マーク・スティーブ・ジョンソン監督インタビュー
「完全無欠じゃないキャラクターのほうが、僕には魅力的なんだ」

押井守監督の「攻殻機動隊」が好きだと言う マーク・スティーブ・ジョンソン監督
押井守監督の「攻殻機動隊」が好きだと言う マーク・スティーブ・ジョンソン監督

経歴からも明らかなようにアメコミ好きの監督だが、子供の頃から大好きなのはゴーストライダーとデアデビル。ダークなヒーローが好きなのは、彼らと共通点があるから?

「わはは(笑)、そんなことないよ! でも妻にもそう言われた(笑)。彼らに惹かれるのは確かだから、僕自身にも彼らのような部分があるのかもね。ま、僕自身はスーパーマンだって嫌いじゃないんだよ。でもスーパーマンは僕の助けを必要としていないんだ(笑)。あまりに強くて正しくて善でさ。その点、デアデビルは精神的にも混乱してるし、ゴーストライダーは悪魔に魂を売っちゃうようなヤツだろ? そういう完全無欠じゃないキャラクターのほうが、僕には魅力的なんだ。彼らの物語を描きたくなるんだよ」

この企画には「ブレイド」シリーズのデビッド・S・ゴイヤーの書いた脚本もあった。

「あれはすごくいい脚本だった。ダークで暴力的でR指定で。でも僕は僕自身の物語を描きたかったから、この映画はあの脚本とはまったく関係ない。ゴーストライダーを一種の賞金稼ぎとして描いたのも僕のアイデアだ」

本作にはマカロニ・ウェスタン映画、ホラー映画、ヘルス・エンジェルスに代表されるアメリカのバイカー文化など、アメコミ「ゴーストライダー」のルーツとなったアメリカのポップ・カルチャーがてんこ盛り。まるで、アメコミを通してアメリカの神話体系を描いているようにも見える。

監督はアメコミから正義について学んだ
監督はアメコミから正義について学んだ

「わはは(笑)、アメコミは神話として読まれてるわけじゃないけどね(笑)。アメコミは、アメリカでは子供なら誰でも読むものなんだ。子供はみんなアメコミで読み書きを覚えるんだよ。僕らがアメコミを読むのはただ面白いからさ。でも確かに神話的な部分もあるよ。僕らはまずアメコミを読んで正義とはなにか、善とはなにかを学ぶからね。それに、なぜか人間はいつもヒーローを産み出さずにはいられなくて、だからギリシャ神話にはヘラクレスがいたし、僕らの世界にはデアデビルやゴーストライダーがいるわけだ。そして、彼らは決して健全なキャラクターじゃないのに、不思議なことに彼らが教えてくれるのは正義や善なんだよね」

アメコミ映画といえば派手なビジュアルも魅力。監督ご自慢の映像は次の2つだ。

監督自慢のゴーストライダー変身シーン
監督自慢のゴーストライダー変身シーン

「ひとつは、主人公が最初にゴーストライダーに変身する場面。ポイントは変身がもたらすのは痛みだけじゃないってことだ。人間の皮膚や肉が燃えただれるのは苦痛だけど、人間であることを超越して骸骨になることはエクスタシーでもある、それを表現したよ。もうひとつは、新旧のゴーストライダーが並んで荒野を走るシーン。あの場面には、道端のサボテンが燃えたり、岩の上にいたトカゲが黒コゲになったり、コミカルなディテールがいっぱい詰め込んであるんだ」

「サイモン・バーチ」などアメコミ以外の監督作もある彼だが、次回作は?

「そろそろアメコミから離れたほうがいいんだろうなあとは思ってるんだけど、今取り組んでいるのはアメコミ『プリーチャー』のTVシリーズ化なんだ。僕はこのコミックはアメコミ史上最高の傑作だと思ってる。パイロット版の脚本を書いてるところで、HBOが本気で話を聞いてくれてる。原作通りのダークでかつ倫理的な物語にしたいんだよ」

と、熱弁。ちなみに「プリーチャー」は堕落した牧師と吸血鬼が天国から失踪した神を探して旅をするという異色コミック――やっぱり今後もダークなアメコミ道を行くのかも。

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