エクソシスト ディレクターズ・カット版 : 特集

2000年11月20日更新

今日の「悪魔払い」状況

(編集部)

説明するまでもないが、“エクソシスト”は“悪魔払い師”。悪魔払い(エクソシズム)を執り行う人物のことだ。エクソシズムの語源は、「退散させる」を意味するギリシア語“exousia”と言われている。

悪魔払いの歴史は古い。シャーマニズムに代表される原始宗教では、病気や不幸の原因は、他界の霊が取り憑いたためだとされ、シャーマンの儀式は悪霊を払うことが中心となる。また、紀元前10世紀のソロモン王は悪魔を払ったり封印したりする能力を持っていたといわれているし、新約聖書の中にも、イエス・キリストが悪魔払いを行った模様が記されている(マタイによる福音書12.27、ルカによる福音書11.14)。

「エクソシスト」本編の中で、リーガンの母親にエクソシズムのことを説明する医師は、「現代では捨て去られて、カトリックの秘儀で残るだけですが」と述べているように、今日悪魔払いは盛んに行われているわけではない。だが、どうやら皆無ということでもないらしい。ルーテルアワー・ニュースの98年10月26日号によると、フランスのデランという村の教会で、キャンドルなどが宙を舞う現象が起き、警察に続いて悪魔払い師を呼んだという記録があるし、フリードキン監督によれば、この10月にバチカンで悪魔払いが行われたばかりだという。

カトリック教会は、人間や家、建物などが邪悪な力に取り憑かれる現象の存在を認めている。そして、長年にわたって悪魔払いに関する一連の規則を制定し、バチカンがこれを認知している。映画の中でも、イエズス会のカラス神父は、「悪魔払いを行うためには、『手続き』と『教会の認定』が必要だ」と説明するが、これは事実に基づいているわけだ。またカトリック教会は、「悪魔払い師は、悪魔の狡猾な策略に陥れられないよう十分注意しなければならない」ことも明文化していて、これまた映画の中で、メリン神父がカラス神父に助言するシーンを裏付けている。

カトリック以外の宗派に目を向けてみると、イギリス国教会では、カンタベリー大司教が悪魔払いについて否定的だと言われており、「この件に関しては一個人として対応したい」と述べている。また、他の宗派も含め、現在のイギリスでは悪魔払いを行うものはいない模様だ。また、メソジストやバプティストなどは、牧師が自分の意志で悪魔払いを行ってもよいことになっている。ただし、67年には会議によって一定のガイドラインが定められている。

いずれにしても、73年に全米でこの映画が公開されてから、悪魔払いという儀式の存在が世界中に知られるところとなったのは確か。同時に宗教関係者たちは、映画公開以後この儀式に関してあまり多くを語らなくなってしまったのもまた事実である。実はこの作品、悪魔払いの教本たり得る代物なのかも知れない。

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