ジョン・クランコ バレエの革命児

劇場公開日:2026年3月13日

ジョン・クランコ バレエの革命児

解説・あらすじ

ドイツ地方都市の小さなカンパニーだったシュツットガルト・バレエ団を世界トップレベルに押し上げた天才振付家ジョン・クランコの半生を、同バレエ団の全面協力により映画化。クランコの代表作「オネーギン」の誕生秘話と、45歳の若さで非業の死を遂げた彼の素顔を、現役の花形ダンサーたちによる圧巻のダンスシーンで彩りながら描き出す。

イギリスで活躍する新進気鋭の振付家ジョン・クランコは、警察のおとり捜査により同性愛行為の罪で起訴される。1960年、ロンドンを追われた彼は、伝手を頼ってシュツットガルト・バレエ団で客演することになる。偏見なく自分を受け入れてくれる同バレエ団に居場所を見つけた彼は翌61年に芸術監督に就任し、自由な発想で美と情熱を表現する作品とカンパニーを作り上げていく。1969年、バレエ団はニューヨークのメトロポリタン歌劇場に招かれ、一夜にして世界の頂点へと駆け上がる。

「マレフィセント」「コントロール」のサム・ライリーが主演を務め、情熱と革新的な才能にあふれながらも芸術追求に純粋すぎるあまり時に他人を傷つけてしまうクランコを熱演。監督・脚本は「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」で知られ、長年にわたりシュツットガルト・バレエ団を取材してきたヨアヒム・A・ラング。

2024年製作/138分/G/ドイツ
原題または英題:John Cranko
配給:アットエンタテインメント
劇場公開日:2026年3月13日

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スタッフ・キャスト

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(C)2023 Zeitsprung Pictures GmbH

映画レビュー

5.0 天才振り付け師は、彗星のごとくに

2026年4月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ここ長野県・軽井沢には夏季限定の屋外バレエシアターがある。
その斬新な舞台の「背景」は、 描き割りのペンキ画ではなく、そのままぶち抜きの見通しであり、森と林をバックに夜風を受けて白鳥が踊るという意表を突いた舞台だ。

「ジョン・クランコ」
本作も、屋外でのダンスシーンが繰り返されていて、目が奪われる。
=つまり、ハコ物としての劇場やらそれまでの概念やらにはとらわれない、一人の振り付け師の、彼の頭の中のイメージとしての「野外でのダンスの風景」が、
映画全体の中でとてつもなく重要な要素になっている。すなわち「公園」や「舗道」や「草原」でのバレエ。

この映画はバレエ映画では無かったのだ。
ダンサーの成長物語でも無かった。
ましてやスクリーン用に記録されたいま流行りのデジタル・シアターでも無い。
これは本当に《まだ始まっていない霧のような物を掴もうとする舞台芸術家たち》の「前段階の仕事の記録」なのだ。だからちょっとこれは珍しい。

だから、劇中で流れるのは既に古典となったコールドバレエの再演ではなく、この世の誰もまだ知らない未知の世界。振り付け師の脳裏にだけ浮かぶ「未だ形になっていない世界」だ。
彼の描く心の中の絵に向かって、
我々観客も想いをかき立てられる ―そのような映像演出が全編を通して盛り沢山なのだ。

・霧の中のダンサーの幻影が⇒稽古場でのぶれない指示に昇華し。
・クランコの瞳にまざまざと映る新しい演出が⇒舞台でのコンテンポラリーに結実する。
・振り付け師の彼はレコードの針を幾百回も戻してその発想を耕して、また自身の感性を刺激しなおす。
それが彼の創作風景だった。

映画の作りとしてもこの「無形の混沌としたイメージに全振りをして」、「それが有形の振り付けに結んでいく」というプロセスをば、ここまでスクリーンに表現しきった撮影のアイデアには、もう流石!と言うしかない。
どうだろう、世の演出家たちや振り付け師たちは、彼らの日ごろの作業=「無から有への創造行為」に着目してもらえたこの独特の映画。嬉しかったのではないだろうか?
(僕も本を書いて小さな劇団を指揮した事があったので『あるある感』満載の鑑賞だった)。

・・

【配役】としては、ゆかりのある教え子たち、後輩たち、そして同僚たちが、尊敬する先輩のドラマを実演で演じるのだから、
撮影の現場にあってもこのカンパニーの物語に、出演者たちの想いが入魂されて、ここまでの感動作となるのだろう。

僕はフランスの作曲家ガブリエル・フォーレの「レクイエム」が堪らなく好きなのだが。たくさんの名演録音はあるけれどダントツのピカ一は「合唱団の指揮者が急逝した直後に、その敬愛する先生のために子供たちが歌ったレクイエム」だ。それは祈りと愛が真に迫る歌唱となる(ミッシェル・コルボ指揮、ベルン交響楽団)。

つまりこの映画にも《それ》が起こっている。ひとりの振り付け師の生と死。追悼と惜別と感謝が、この伝記映画のスピリットになっている。その事が本当に良く伝わってくるから、だから嘘がなくて観る者たちにも感動のドラマが直かに響いてくるのだと思った。

物語が始まってじきのシェークスピア「ロメオとジュリエット」。丹念に描かれていて素晴らしかったなぁ。あれは家柄と生まれの呪縛に引き裂かれた男女の物語。
そしてドラマの終結においてはマイノリティの自分を「家族」として受け入れてくれたシュツットガルトのために、置き土産としての「オネーギン」を、彼らの目玉として遺していくクランコの死。
愛して止まなかったバレエの世界と、それが上手く伝わって行かないもどかしさを「オネーギン」の曲折する難しいストーリーに重ねて、クランコは描く訳だ。

アパルトヘイト。アウシュヴィッツ。同性愛への憎悪。
それらのテーマの急進性には目が眩むし、観客への挑発演出にも腰を抜かす。

受けて立ったシュツットガルトも凄い。
エトワールたち、つまり踊り手のプリンシパルやプリマはピリオド的伝説になるけれど、劇場の懐の深さと振り付け師の偉業は、以降新たなスタンダードとなって、その後のバレエ界の歴史になっていくわけだ。クランコとシュツットガルトが新たなクラシコになっていくのだ。

・・

そしてもう一つ、この映画で目を奪われたのが劇場建築でした!
シュツットガルト州立劇場のその内外の美貌。あれは文人が「世界で一番美しい劇場」と称んだのだと。そして遠征先シーンでのMETの燦然たる客席・・。タメイキ。
これら舞台となったハコの美しさは、この映画のもう一つの隠れた主役と言って良いと思う。

主演のサム・ライリーの洒落たドレスと、流暢なドイツ語にもびっくり。

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きりん

4.0 最後のヘビースモーカー

2026年4月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

バレエ好きの方の推薦で見にきました。私はコンテンポラリーは好きだけどクラシックは苦手であまり知識がなかったからジョンクランコという振付家知りませんでした。彼とシュトッツガルト舞踏団の関係もしらんかった。なかなか破天荒な天才が居たんだね、もっと長生きしてもっと作品作ってたら面白かっただろうなぁ。

主役の他のキャスティングもなんだか素晴らしく、当舞踏団の全面協力で現役ダンサー達のハイレベルの踊りもたのしめます。クランコのイメージシーンで街のなかでダンサー達が踊り出すシーン…なんかダサいかもと思ったんだけど、イメージを頭でシュミレーションして具体化する時って実際確かにこうやってそこに居る事を想像して考えてるなぁ、と思い直してなんだか納得した。あれだけヘビースモーカーだとダンサー達も大変だったろうなぁ、ピナバウシュも蜷川幸雄もヘビースモーカーだったから、演出振付家のデフォなのかもしれない…ストレスマックス職業ですな。

最後に着てたピンクの服は演出ではなく史実だそうです。

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masayasama

4.0 バレエシーンにうっとり

2026年3月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

ドキドキ

ジョン・クランコはシュットガルトバレエ団を世界的なバレエ団にした人という前知識しかなく映画を観ました。
あまりバレエの知識がなくても、現役のシュットガルトバレエの団員の踊る数々のバレエシーンに感動しました。
同時に素晴らしいバレエを創り上げ、団員に慕われ、世界で評価されていたクランコの深い孤独を感じられる映画だったと思います。

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あやあや•f

4.0 バレエ芸術の高みと人の孤独の深さ

2026年3月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ジョン・クランコの芸術に対する情熱は誰にも負けないし、才能を見出す審美眼はすごい。常にビジュアルが脳内とか瞳の中にイメージされる、芸術家に相応しい資質の持ち主だ。

一方で団員たちに対する要求も非常に厳しく、舞台美術担当は独創性に欠けるデザインには即座にダメ出しを喰らう。バレリーナは技術的には完璧なのに、内面表現を磨くため海外修行を強いられる。

そんなジョン・クランコだが、決して聖人君子ではない。アルコール依存ぎみで情緒不安定。男性遍歴も華やかでパートナーも何度か変わっている。失恋や酷評に悩み自殺未遂も。好評を博した舞台の直後にプリマやプリンシパルに対してすら辛辣な言葉をかけてしまい、後になって謝罪するという屈折した性格の持ち主でもある。
冒頭での「人は愚かな面がなければ、美しさが見出せない」という本人の独白を体現している。

バレエシーンはいづれも素晴らしいが、ニューヨークのMETでの「オネーギン」の舞台は数シーンながら筆舌に尽くせない程で、バレエに全く詳しくない私でも鳥肌ものであった。

クランコの人生は、シュトットガルトバレエ団の素晴らしい仲間たちに囲まれ、尊敬され愛された人生であったことは間違いない。それでも彼の人生につきまとう孤独感をどう咀嚼すればよいのだろう。

深く心に残る作品である。

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sugar bread

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