エリス&トム ボサノヴァ名盤誕生秘話

劇場公開日:2026年3月6日

解説・あらすじ

1974年にブラジルのスター歌手エリス・レジーナとボサノバの創始者のひとりアントニオ・カルロス・ジョビン(トム・ジョビン)が共作した名盤「Elis & Tom」のレコーディング風景を記録したドキュメンタリー。約半世紀にわたり埋もれていたオリジナル映像を4Kリマスターし、現代のインタビューを追加して完成させた。

軍事政権下のブラジルで国民的スターとして活躍していたエリスと、1960年代に「イパネマの娘」の大ヒットで世界的人気を博し、アメリカで活動していたトム。ポップスターのエリスと古き良きシンプルな音楽を好むトムとの相性は最悪で、エリスの当時の夫でアレンジャーだったセザル・カマルゴ・マリアーノとトムとの関係にも亀裂が生じていた。

家族や関係者、バンドメンバーの証言とアーカイブ映像を通して、2人の音楽性の違いやレコーディングをめぐる葛藤を描き出す。エリスのマネージャーを務めた後、テレビ局でディレクターやプロデューサーとして活躍するホベルト・ヂ・オリベイラが共同監督を務め、本編にも登場して当時のエリスの複雑な心境や混乱した現場について証言する。

2022年製作/100分/ブラジル
原題または英題:Elis & Tom: Só Tinha de Ser com Você
配給:ディスクユニオン
劇場公開日:2026年3月6日

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(C)O2 PRODUҪÕES ARTÍSTICAS E CINEMATOGRÁFICAS LTDA.

映画レビュー

4.0 飾らないこと。音楽の神が舞い降りた奇跡のモーメント♪

2026年2月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

驚く

 トム・ジョビンとは何者なのか——。この映画を観て、その名はアントニオ・カルロス・ジョビンのニックネームだと知った。トムはブラジルが生んだ唯一無二の音楽家。14歳の頃ピアノを弾き始め、1953年にEMIと契約すると作曲家&アレンジャーとして頭角を現す。
 1959年、アカデミー賞外国映画賞に輝いた映画『黒いオルフェ』の作曲(ルイス・オルファとの共作)で注目された後、ボサノバ始まりの曲として今も歌い継がれるジョアン・ジルベルトの「思いあふれて」で一躍時の人となった。その名を世に轟かせたのは、1962年に発表した「イパマネの娘」の大ヒット。ミニマルでありながら芳醇、その豊かな音楽で世界を魅了した。

 エリス・レジーナは不世出のヴォーカリスト。ブラジルの国民的な歌手として愛された彼女は、11歳でラジオデビュー、1961年にアルバム「Viva a Brotolândia」をリリース。1965年に第1回ブラジル音楽フェスティバルで優勝し、移籍したフィリップスから出したジャイル・ロドリゲスとの共演ライブ「Dois na Bossa」は当時の国内売上記録を更新する大ヒットとなった。
 1960年代後半にヨーロッパ進出を試みる。だが彼女の前には見えない大きな壁が立ちはだかった。失意と憤りを抱えて帰国しその後も活動を続ける。だが、1972年の軍事政権主催イベントで国家を歌ったことでファンの反感を買ってしまう。これは当時のマネージャーの大失策だった。

 1974年、フィリップス・レコードはレーベル移籍10周年を祝うプロジェクトアルバムの制作をエリスに提案する。どうやらイメージ回復のことも意識されていたようだ。トム・ジョビンことアントニオ・カルロス・ジョビンとの協働を念願していた彼女は「夢が叶った」と喜々としてレコーディングに臨む。
 1975年2月22日、当時の夫セザル・カマルゴ・マリアーノを伴ってトムが滞在するLAに到着する。セザルはピアニスト、作曲家、アレンジャーとしても活躍する音楽家であり、エリスの良き理解者で最も信頼するパートナーだった。

 28歳のエリスを笑顔で出迎えたトムは47歳。歌唱と作曲、共に第一線で活躍するふたりのコラボレーションが始まる。熱唱型のエリスとミニマルな自分の音楽を追求するトム。異なる音楽性を持つふたりの隔たりに、マリアーノからの編曲提案が拍車をかける。ほどなくスタジオには険悪な空気が漂い始める。

 これ以上続けられない。エリスが限界に達しそうになったとき、音楽の神が舞い降りる。愛される音楽を生み出したい。誰もが同じ思いだった。セザルがトムの言葉に耳を傾けるようになり、このレコーディングで初めて音響エンジニアを務めたチリ生まれのウンベルト・ガティカが素晴らしいミキシングで応える。後にクインシー・ジョーンズやセリーヌ・ディオンらと仕事をする凄腕である。当然ミュージシャンたちもゴキゲンな演奏を続ける。

 トムが目指す音楽の神髄はどこにあるのか。彼が求めるヴォーカルとは…。
 歌い、語り、互いをリスペクトする。飾らないこと。声を思いっきり張り上げるのではなく、鳥がさえずるように軽やかに。歌うことの喜びを見つけたエリスの微笑みが、陽光がもたらす恵みのように人々を朗らかにする。自然体で普遍的なボサノヴァ誕生の瞬間、本編に収められた奇跡のモーメントが我々を多幸感で包み込む。

 『エリス&トム —ボサノヴァ名盤誕生秘話—』は、1974年当時エリス・レジーナのマネージャーとしてレコーディングに立ち会ったホベルト・ヂ・オリヴェイラと、LA在住で映画を学んだジョム・トブ・アズレイが監督を務めている。フェルナンド・ドゥアルテが16ミリフィルムで撮影したレコーディングのリマスター4K映像に、ブラジルの音楽シーンの第一線で活躍したふたりの軌跡を重ね合わせることでボサノヴァの入門編としても楽しめる作品になっている。

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髙橋直樹

3.0 「Águas De Março」が素敵過ぎて、コラボ曲をもっと聴きたかった

2026年9月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

前半は共作までの二人それぞれの道程を、中盤から二人によるアルバム制作が始まります。冒頭は軽快でした。特にトムの華やかな経歴が目立ちます。フランク・シナトラら有名歌手は彼の存在を見逃さず、同じ舞台で豪華なコラボレーションが実現。シナトラはこの映画の中で「イパネマの娘」を歌っています。

一方、エリス・レジーナも唯一無二の歌声が魅力のアーティスト。ただ序盤の紹介で彼女の運命が知れてしまいます。ここで知る必要があったのか….ただこのドキュメンタリーが佳境に進んだところでその詳細は語られていきます。彼女のストイックさ、メンタル面が影を落としていくのです。

この映画は序盤、アルバム制作風景となってやっと音楽映画の様相を示します。ただ中盤は関係者が当時を振り返るインタビューばかりでテンションが下がりました。もっと二人、あるいはそれぞれの音楽性を示す楽曲を流しても良かったと思います。二人が歌う「Águas De Março」が素敵過ぎて、映画の中でコラボ曲をもっと聴きたかったです。

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うまあな

4.0 歌を堪能できました。

2026年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

アントニオ・カルロス・ジョビンとエリスの歌を堪能できました!
二人の物語は全く知らなかったのですが、それでも純粋に歌が楽しめた映画でした。
逗子のシネマアミーゴで鑑賞。

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みんみん

4.0 興味深いレコーディング風景

2026年5月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

驚く

よくこの映像が残っていたと感心せざるを得ない。奇跡的な時間を良く捉えた素晴らしいアーカイブだ。紛れもない天才同士が表面上は取り繕ってはいても、水面下ではバチバチの鍔迫り合いが続いている。強烈な個性がぶつかり合うスリリングさは鑑賞者にも伝わる。寛いだ雰囲気の中にも妙な緊張感が終始貫いている。エリスの歌はとても素晴らしい。一次元高いところから聞こえて来るような、穏やかであっても深く心に届く様な彼女の声はとても清らかだ。ただ個人的にはサラブレッドの二人の偉大さはとても良く理解出来るものの、さほど惹かれるものがないのは個人的な感想だ。清らか過ぎるものよりも、雑多でいなたいものに私は惹かれる。

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shanti

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