小さなロバ、ビム

劇場公開日:2025年11月14日

小さなロバ、ビム

解説・あらすじ

「赤い風船」「白い馬」で知られるアルベール・ラモリスが1951年に発表した、初の劇場用長編作品。少年とロバの友情を描く。

はるか昔、東方のある島では、子どもたちがそれぞれ1頭のロバを飼う習わしがあった。ビムはその中でも最も美しいロバで、貧しい少年アブダラがその飼い主だった。ところが、意地悪な領主の息子メサウドがビムに一目ぼれし、アブダラからビムを奪い取ってしまう。連れ去られたビムを取り返そうと、アブダラは勇敢にも領主の屋敷に忍び込むが、護衛に見つかり牢に入れられてしまう。

日本では長らく劇場未公開だったが、2025年、「赤い風船」「白い馬」の4Kデジタル修復版の公開にあわせた特集上映「映像詩人アルベール・ラモリスの知られざる世界」で、4Kデジタル修復版で劇場初公開される。

1951年製作/55分/G/フランス
原題または英題:Bim, le petit âne
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2025年11月14日

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映画レビュー

4.0 ラモリス監督の人間性‼️

2026年8月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

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活動写真愛好家

4.0 映像詩人アルベール・ラモリス28歳の瑞々しい演出が素晴しい、少年とロバの愛情物語

2026年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

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斬新

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映像の詩人では同じフランス人ジャン・コクトーと並んで個人的に最も敬愛するアルベール・ラモリス(1922年~1970年)監督の短編劇映画初作品を、幸運にもBS放送で鑑賞しました。25歳の時に写真家から記録映画の監督に転身し、「ジェルバ」(1947年)というチュニジアのジェルバ島の短編ドキュメンタリー映画を撮って、その3年後に同地で制作された子供と一匹のロバの友愛を描いた寓話的物語です。チュニジアは独立の1956年までフランスの植民地であり、ラモリス監督にとって愛着のある土地だったと思われます。サイレント映画のような素朴な映像表現で語られる、貧しい少年と美しいロバのビム(アラビア語でロバの意味)の単純なストーリーがラモリス監督の独特な優しさに包み込まれ、この童話映画の詩情に見惚れました。ロシアのアンドレイ・タルコフスキー、スペインのビクトル・エリセなど、世界には優れた映像詩の監督がいますが、ラモリス監督の純粋なるものの詩情、空に飛翔する自由への希求、そして生死の境の無い世界観は、独自の映像美を創造しています。この初期の作品には得意とする空撮映像がないものの、最後の地中海をロケーションした泥棒と少年たちの海上の戦いのクライマックスの撮影の素晴らしさに感服し、良い映画に出会えた感動に満足しました。心が温かくなるフランス映画です。

脚本はラモリス監督とジャック・プレヴェール(1900年~1977年)というフランスの国民的詩人の共作で、このプレヴェールはマルセル・カルネの「悪魔が夜来る」(1942年)「天井桟敷の人々」(1945年)などの脚本家です。それと『枯葉』などのシャンソンの作詞や児童文学も手掛けていて多方面に活躍した文学者と知りました。そして、この作品ではナレーションもしている程に、愛着をもって携わっています。音楽のアルジェリア出身のモハメド・イグルブーシャン(1907年~1966年)も、ジュリアン・デュヴィヴィエの「望郷」(1937年)でも音楽を担当していて、ヨーロッパで学んだ西洋クラシックからアラブ音楽のオーソリティとして高名な作曲家でした。アラブ的な建築の背景にあった音楽は、時にユーモラスなメロディを奏で物語の詩情を音楽で支えます。撮影はアンドレ・コスティ(1914年~?)とギイ・タバリー(?~1970年)の2人が担当して、アラブ風の白い建物をモノクロ映像の構図に生かして美しく、洋上のクライマックスのカメラワークも素晴しい。28歳の新人監督を支える、これらベテラン映画人スタッフの充実度にも感心します。ギイ・タバリーは「素晴らしい風船旅行」(1960年)で空撮映像を撮った名カメラマンですが、1970年イランでの撮影の仕事で監督のラモリスと共に事故に遭い亡くなっています。この組み合わせで素晴らしい作品がもっと生まれていたと思うと、とても残念でなりません。

前半はアラビアンナイトの童話編の趣で少年アブダラのビムへの一途な愛情を描いて、後半は泥棒に連れ去られたビムを救いに、改心した長官の息子メサウド始め仲間の少年たち総出で立ち向かう映画的な活劇に転じます。2台の馬車を走らせ、荒野を逃げる泥棒を追い掛けるショットの西部劇タッチの可笑しさ。馬車に乗れない少年たちが其々愛馬を引き連れて追い掛ける健気さの面白さ。泥棒が小船にラクダを乗せて運ぼうとするショットも珍しい。そして、もっと驚くのは、泥棒との戦いで子供たちが海に放り投げられるショットの連続です。小さな帆船に子供だけが乗って航走するショットと同様に、撮影の危険性を想像してしまいます。登場する子役たちは現地の子供たちと思われるも、演技も含めて危険な撮影に挑戦したことが、この映画の成果につながっていることは間違いありません。ここにラモリス監督の危険を省みない映画人の覚悟とこだわりを強く感じました。アブダラに可愛がられるロバのビムの演出も素晴しく、泥棒に引きずられて嫌がるところなど、そのシーンにあった動きの的確さと丁寧さが巧い。メサウドから首に布のベルトを飾られてから長官の食事を盗み食いするシーンでは、その途中でオウムとすれ違うショットを入れています。この擬人化の可笑しさにある、ラモリス監督の生き物への優しさがいい。このシーンで、ロベール・ブレッソンの「バルタザールどこへ行く」(1966年)との類似性をより強く感じました。ラスト、ビムを取り返し島に戻るシーンの海の輝きのショットがまたいい。夕陽に反射した水面の光が少年とロバたちを讃えているような映像の詩的さです。

何となく切なく、どこかユーモラスなこの少年たちを主人公にしたフランス映画の優しさと寓話性を改めて思うと、戦前のジャン・ヴィゴの「新学期 操行ゼロ」(1933年)やイブ・ロベールの「わんぱく戦争」(1962年)を想い出します。フランス映画の大人度の高さは一般的に知れ渡っていますが、その大人の視点で子供を描く児童映画もやはりフランスらしい。

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Gustav

未評価 サイレント映画を思わせるお伽噺

2026年4月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アルベール・ラモリス監督特集 - その5

 ロバと言えば欧米では間抜け・鈍重の象徴としていじめられキャラで描かれる事が多く、精悍な疾走姿の馬とは大きく異なる扱いです。しかしそれ故に、無垢で哀れな存在への共感を呼ぶのでしょう。そうしたロバ映画で僕の一番のお気に入りは『バルタザールどこへ行く』(1966) ですが、本作はその15年も前にラモリス監督の長編デビュー作として制作された物語です。

 中近東か北アフリカを思わせる或る島で、美しいロバ・ビムを愛する少年と、そのロバを奪おうとする地方有力者の息子や泥棒のお話です。全編、台詞は殆どなく、モノクロ映像・音楽とナレーションだけで進む造りに、ラモリス監督は第一作からサイレント映画に由って立つ映画作りだったんだなと改めて感心しました。でも、それがお伽噺の様な本作にはピッタリで、絵本を1ページずつめくる様な暖かさと可笑しみがあります。

 本作から『白い馬』(1953)への繋がりを通して見ると、この監督は、大空を飛ぶ鳥になろうとしたり、草原を駆ける馬になる夢を見たり、今・ここにある軛を断ち切って自由を希求した人だったのかななどと思うのでした。

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La Strada

5.0 父が撮る、我が子のためのアラビアンナイト

2026年2月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ロバの歩みは遅い。子供の歩幅だ。

だから、東京や愛知県などの大都会では昨年の秋口にはすでに上映されていた本編なのだが、
ようやくもってここ信州までやって来てくれたという感じだ。

ロバは、甲州街道や、中山道をゆっくりゆっくり、あの短い足でトコトコと、アルプスの谷間の山道をつづら登ったのか。
この2月の末になって、やっとこさ標高720メートルの塩尻市東座に到着してくれた訳だ。

ようこそビム。お疲れ様。

今回アルベール・ラモリス監督の三部作と云う事であり、三本立てだと見終わってからの「どれがどれやら?」と、鑑賞後の記憶とレビューの自信が無くなる。
ましてやそのうち二作はロバとウマであるからにして(笑)
でもそれぞれが短編であってくれた事で、いつもならストーリーに付いていく事がやっとのこの僕にも、ちゃんと楽しめた映画時間だった。

・・

「ロバ」と云えば、うちの娘が庭でポニーを飼っていたことを、どこかで書いたはずだ。
近くの動物公園に、雨の日も雪の日も、毎週日曜日には必ず通い詰めであった我が娘は、日本一幼い保育園児の馬主となった訳で、
「そんなに好きなら連れて帰るかい?」と勧めてくれた飼育員さんの言葉を直 (チョク に受け止め
まさかの本当に!仔馬を連れて帰宅したのだった。

そんな愉快な体験があったものだから、本作「小さなロバ、ビム」も、そして併映「白い馬」も、我が家のアルバムを温かくめくるような気持ちになれたのだ。

・・

舞台はたぶんモロッコかチュニジアあたりだろう。
フランスからの独立も間近い北アフリカの街でのお話。

子供たちが1頭ずつロバの仔を養い、世話をするのが習わしなのだと。そこからしてどうしても頬が緩む。
駆け回って遊ぶロバと男の子たちが、もう途中からはみんな一緒くたに見えてくるから、見ている方も楽しくてしょうがない。

みんなが仲良く、盗賊や意地悪な領主の息子をやっつけながら、砂漠も海も、とにかく元気に走り続けるスクリーンだった。

その海での追跡劇は、あれは今ならばコンプライアンスに引っかかる危険な撮影だろう。死人が出なかったのかと心配になったが、手に汗十分の迫真のロケ。

それにしても領主の息子メサウド君が思いがけず良かった。自分の我儘さを、あそこまで大げさに(笑)うなだれて悔悟し、少年たちを率いて馬車を駆る姿は実に勇壮果敢としか言いようがない。あのあと父親を超えた良き領主になったのだそうだ。
めでたし めでたしのエンディングのナレーションは、まさにアラビアンナイトのそれでしたね。

アルベール・ラモリスは、きっと母親や祖母たちからたくさんのお話を聞いて育ったのだろうし、
そのアルベールは今度は父親として息子パスカルに見せてやるためにと、これらの映画を撮って愛息にプレゼントしてやったに違いない。

明らかに子ども目線の瑞々しい映画だった。
ロバの仔たちは、大きくなれば必ず売られて別れて行くのだと知ってはいても。

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きりん